PtoCとは?DtoCやインフルエンサーマーケティングとの違い、注目の理由や成功事例まで
最近注目されているビジネスモデル「PtoC」を詳しく解説します。インフルエンサーマーケティングとの違いや成功事例をはじめ、PtoCの始め方についても紹介します。
PtoC(P2C)とは個人が消費者に直接商品やサービスを提供するビジネスモデル
PtoC(Person to Consumer)とは、影響力のある個人(インフルエンサー)が、消費者に直接商品やサービスを提供するビジネスモデルです。個人が企画・生産から販売までを一貫して担うという点が特徴的です。
より詳しいビジネスモデルや、混同されやすいDtoC(D2C)との違いやインフルエンサーマーケティングとの違いを、以下項目で解説します。
PtoC(P2C)のビジネスモデル
PtoC(P2C)のビジネスモデルは、個人が自身のブランドや商品を企画し、SNSやブログなどを通じて発信しながら、ECサイトや実店舗で直接販売するというものです。中間業者を介さず、個人が直接消費者とつながるため、利益率が確保しやすいという特徴もあります。
多くの場合、インフルエンサーや専門家が自身の影響力や知識を活かして商品を開発し、ファンに向けて販売します。SNSを活用した情報発信や顧客とのコミュニケーションが重要な役割を果たし、個人の魅力や専門性が商品価値に直結します。
DtoC(D2C)との違い
PtoC(P2C)とDtoC(D2C)の主な違いは、販売主体が「個人」か「企業」かという点です。DtoCは企業が直接消費者に販売するモデルで、市場を意識した製品開発や、さまざまなマーケティング手法でのプロモーションが必要不可欠です。
一方でPtoCは、個人の影響力や専門性を活かし、親密な関係を築いている顧客をターゲットに商品を直接販売します。一定の影響力があるインフルエンサーは、広告などを使うことなく自身の発信媒体で告知をするだけで、大きな売上を見込めるのです。
両者とも中間業者を介さない点は共通していますが、製品開発の過程やマーケティング手法に違いがあるといえるでしょう。
インフルエンサーマーケティングとの違い
PtoC(P2C)とインフルエンサーマーケティングは混同されやすいキーワードですが、ジャンルが異なります。インフルエンサーマーケティングは企業がインフルエンサーを活用して商品をプロモーションする「マーケティング手法」であり、PtoC(P2C)は個人が消費者に直接商品を販売するという「ビジネスモデル」です。
たとえばインフルエンサーマーケティングでは、インフルエンサーは「他社の商品を紹介・宣伝する役割」を担います。一方でPtoCは、個人(インフルエンサー)が自身の商品を企画し、自身の発信媒体で宣伝後、自身のECサイトなどで販売します。
インフルエンサーマーケティングは、企業が売上を立てるための「マーケティング手法」。PtoC(P2C)は、個人が商品を消費者に直接販売する「ビジネスモデル」と覚えておきましょう。
PtoC(P2C)が注目されている理由
PtoC(P2C)が注目されている理由として、主に下記4つがあげられます。
- YoutubeなどSNSによる個人の発信力が強まった
- 個人でも商品生産できるような環境が整ってきている
- 世代による消費動向の変化
- 個人が簡単にECサイトを持てるようになった
以下、詳しく解説します。
理由1.YoutubeなどSNSによる個人の発信力が強まった
近年、YouTubeやInstagramなどのSNSの普及により、個人の発信力が飛躍的に強まりました。個人が影響力を持つと、多くの人に自社商品を宣伝しやすいです。ファンが多ければ商品を購入してもらいやすいため、影響力に比例して大きな売上を期待できるのです。
また、SNSを通じて商品の背景にあるストーリーや価値観を効果的に伝えられるため「見込み客(ファン)との良好な関係を築きやすい」というメリットもあります。その結果、リピーターも多くなり、PtoC(P2C)ビジネスが安定しやすいのです。
理由2.個人でも商品生産できるような環境が整ってきている
近年では、3Dプリンターなどのデジタル製造技術の発展により「小ロット生産」に対応する製造メーカーが増加しました。その結果、資金が少ない個人でも商品を生産・販売がしやすくなったのです。
また「ドロップシッピング」というビジネスモデルが普及したことも、PtoC(P2C)が注目されている要因といえるでしょう。「ドロップシッピング」とは、消費者から注文を受けてから販売者が製造メーカーに商品を発注し、消費者に直送してもらうというビジネスモデルです。
さまざまな要因から、小資金で商品を生産できたり、在庫リスクを抱えることなく商品を販売できたり、PtoC(P2C)ビジネスを実践しやすい体制が整ってきています。SNSの普及も相まって、PtoC(P2C)ビジネスが注目されたのです。
理由3.世代による消費動向の変化
PtoC(P2C)が注目されている理由として「世代による消費動向の変化」があげられます。現代では大小さまざまな企業が、あらゆる商品を販売しています。似たような性能の「類似商品」が多い中で、より個性的で意味のある商品を好む世代が増えたのです。
特に10〜30代の若年層は、商品の背景にあるストーリーや生産者の価値観を重視し、単なる機能や価格だけでなく「イミ消費」と呼ばれる情緒的価値を求めます。PtoCビジネスは、こうした消費者のニーズに応えやすく、商品に込められた思いや制作過程をSNSで直接伝えることができるため、若年層の消費動向が活発になったのです。
また、若年層はSNSの利用率が高く、インフルエンサーの影響を受けやすいため、PtoCモデルとの親和性が高いといえます。
理由4.個人が簡単にECサイトを持てるようになった
PtoC(P2C)が注目されている理由として「個人がかんたんにECサイトを持てるようになった」という点もあげられます。ShopifyやBASE、makeshopなどのECプラットフォームの登場により、プログラミングスキルがなくても、わずかな費用で本格的なECサイトを開設できるようになりました。
ECプラットフォームは、決済システムや在庫管理、顧客データ分析など、EC運営に必要な機能を包括的に提供しており、個人でも比較的かんたんに実装可能です。また、YouTubeショッピングやInstagramショッピングなどの「SNSが提供するショップ機能」との連携も充実しており、個人の情報発信とECサイトを効果的に結びつけられます。
こうした環境の整備により、個人が自身のブランドや商品を直接消費者に販売する障壁が大きく下がりました。
PtoC(P2C)の成功事例9選
PtoC(P2C)ビジネスを成功させるには、一筋縄ではいきません。多くの成功事例を参考にして、成功確率を上げるとよいでしょう。
ここでは、PtoC(P2C)ビジネスの成功事例を9つ紹介します。
事例1.Ririmew(リリミュウ)
Ririmew(リリミュウ)は、元AKB48のメンバーで人気タレントの指原莉乃氏がプロデュースするコスメブランドです。指原氏の強力な影響力と、美容に関する深い知識を活かして開発された商品は、ファンから高い支持を得ています。
新商品販売の予約初日には2万件もの注文を集め、4商品が5つの部門で楽天デイリーランキング1位を獲得するなど、大きな成功を収めました。指原氏自身がインスタライブやYouTube動画で商品の魅力を丁寧に解説し、ファンとの直接的なコミュニケーションを重視している点が、このブランドの強みといえるでしょう。
事例2.Rezard(リザード)
Rezard(リザード)は、人気YouTuberのヒカル氏がプロデュースするファッションブランドです。ヒカル氏は、490万人以上(2024年6月時点)のチャンネル登録者を持つ影響力の強いYouTuberで、その影響力を活かしてブランドを展開しています。
またヒカル氏は、大手ECサイトの『ロコンド』と提携してスニーカーを販売した際、発売初日にサーバーがダウンするほど話題になり、販売開始から1週間で6億円の売上を達成しました。
ヒカル氏自身がYouTubeなどのSNSで、ブランドの理念や商品開発のこだわりを発信しており、その魅力に惹かれたファンによって高い成約率を実現しています。
事例3.MARINESS(マリネス)
MARINESS(マリネス)は、人気トレーニングYouTuberの竹脇まりな氏がプロデュースするフィットネスブランドです。竹脇氏は400万人以上(2024年6月時点)のチャンネル登録者を持つ「宅トレクリエイター」として知られ、その影響力を活かしてブランドを展開しています。
特に「マリネスプロテイン」は大ヒット商品となり、2021年12月の発売から7か月で約25万個を売り上げました。
竹脇氏は、ECサイトだけでなく実店舗での販売も行うマルチチャネル戦略を実践しています。実店舗での販売も視野に入れている方は、参考になる事例といえるでしょう。
事例4.Yunth(ユンス)
unth(ユンス)は、美容家・コスメセレクターとして知られる千葉由佳氏がプロデュースするスキンケアブランドです。Instagramでのコスメ紹介が「#ちばゆか買い」として話題になるほどの影響力を持ち、Yunth(ユンス)の商品は先行予約で即完売するなどの大きな反響を呼びました。
特に「生ビタミンC美白美容液」の累計販売個数は2024年1月時点で300万個を突破しており、楽天市場の美容液部門でランキング1位を獲得するなど、高い評価を得ています。
千葉氏は、14万人以上(2024年6月時点)いるInstagramフォロワーと密接なコミュニケーションを取りながら、ファンのニーズに応える商品開発をおこなっています。インスタライブで丁寧な商品説明をしたり、自身の肌悩みを共有したりするなど、ファンとの信頼関係構築に注力している点は、PtoC(P2C)ビジネスのお手本とするべき事例といえるでしょう。
事例5.RICAFROSH(リカフロッシュ)
RICAFROSH(リカフロッシュ)は、人気モデルの古川優香氏がプロデュースするコスメブランドです。古川氏のInstagramフォロワー数は約72万人(2024年6月時点)で、ファッションやメイクの分野で幅広い影響力を持っています。
RICAFROSHの特徴は、古川氏本人からの情報発信を重視していることです。商品開発の過程や使用感などをSNSを通じて詳細に共有したり、古川氏の知人や友人に商品を体験してもらい、その感想をSNSで拡散したり、SNSを活用した販売戦略を実施しています。
SNSをうまく活用したマーケティング施策は、非常に参考になる成功事例といえるでしょう。
事例6.MBブランド
MBブランドは、メンズファッションのインフルエンサーとして知られるMB氏が展開するアパレルブランドです。
MB氏のYouTubeチャンネルは「洋服は”ロジック”で作れる」というコンセプトをもとに発信しており、論理的な解説でファンとの信頼関係を築いています。合理的な考え方の多い男性にマッチした論理的な解説が、高い成約率を実現しているのです。
また、MBブランドは、予約販売に特化しています。予約販売に特化することで過剰在庫のリスクが抑えられ、低資金でもECサイトを運営できるのです。「低資金でも多くの商品を販売したい」と考えている方は、一度公式サイトをチェックしてみてください。
事例7.ADRER(アドラー)
ADRER(アドラー)は、人気インフルエンサーのkei氏がプロデュースするアパレルブランドです。kei氏は『死ぬか変わるか 25歳の僕が年商30億を稼いだ7つの方法』(徳間書店)という著書も発売しており、PtoC(P2C)のアパレルブランドで大きな成功を収めています。
ADRERの特徴は、kei氏の個性や価値観を強く反映したデザインと、コストパフォーマンスの高さです。商品が高額になりやすいPtoC(P2C)ビジネスですが、ADRERの製品はデニムなどを含めて1万円以内の商品がほとんど。若年層でも購入しやすい価格と、デザイン性のよさが成功の要因といえるでしょう。
事例8.CLEL(クレイル)
CLEL(クレイル)は、人気インフルエンサーのmasaki氏がプロデュースするアパレルブランドです。masaki氏のファッションセンスと影響力を活かし、ZOZOTOWNなどの大手ECプラットフォームで商品を展開しています。
CLELの商品は「日々の着こなしから特別な機会のスタイリングまで」というコンセプトをもとに制作されており、さまざまな場面で活用できるアイテムを販売。価格も比較的リーズナブルなため、日常的に着用できる汎用性と、特別感を演出できる個性的なデザインのバランスがCLELの魅力です。
事例9.LIDNM(リドム)
LIDNM(リドム)は、人気インフルエンサーのげんじ氏がプロデュースするアパレルブランドです。げんじ氏のYouTubeチャンネル登録者は100万人以上(2024年6月時点)で、日本最大のファッションコーディネートアプリ『WEAR』では90万人以上(2024年6月時点)のフォロワーがいます。
YouTubeでは、親しみやすい雰囲気の動画づくりで、多くのファッションに関するノウハウを発信しており、ファッションという分野で絶大な信頼を得ています。
ECサイトは非常に高級感があり、比較的高価な商品でも売れやすい世界観を演出。流行に敏感なファッション業界で長年発信しているげんじ氏だからこそ制作できるデザインも、成功の大きな要因といえるでしょう。
PtoCに関するFAQ
PtoCの始め方や販売方法、ASPカートに関するFAQを以下にまとめました。ぜひご覧ください。
PtoCのやり方・始め方は?
PtoCビジネスのやり方や始め方は主に2つあります。1つ目は自分で商品を企画・制作し販売する方法で、2つ目は企業とコラボレーションして商品を開発する方法です。
自分で商品を企画・制作し販売する方法は、比較的少ない資金で始められます。ハンドメイド商品を制作したり、自身のデザインを外部の業者に依頼して製品化したり、自由度の高さが魅力です。少量生産から始められるため、PtoCビジネスを小規模から試したい場合におすすめの方法になります。
一方、企業とのコラボレーションは、より本格的なPtoCビジネス展開を目指す場合におすすめです。双方のブランド力を活かしたマーケティングが可能で、大規模な成功を期待できます。
ただし、企業とのコラボレーションは一定の影響力を持つインフルエンサーになってから取り組むケースが多く、企業側からオファーを受けることが多いでしょう。
PtoCでの販売方法は?
PtoC(P2C)での販売方法は、主に自社ECサイトの構築、SNSでの直接販売、既存のECモールの活用などがあります。自社ECサイトでは、ShopifyやBASE、makeshopなどのプラットフォームを利用して、比較的かんたんにオンラインストアを開設可能です。
SNS販売では、InstagramショッピングやYouTubeショッピングなどの機能を活用し、SNS上で直接商品を販売できます。また、Amazonや楽天市場などの大手ECモールへの出店も効果的な販売方法といえるでしょう。
ただ、PtoC(P2C)ビジネスでは特にSNSを中心に販売促進しているブランドが多いです。「SNSといかに連携しやすいか?」という観点で、販売方法を決めるとよいでしょう。
InstagramショッピングやYoutubeショッピング連携機能のあるカートASPは?
PtoC(P2C)ビジネスを成功させるうえで、SNSの活用は必要不可欠です。そのため、ECサイトを構築する際は、InstagramショッピングやYoutubeショッピングとの連携機能が用意されているカートASPを選びましょう。
カートASP(Application Service Provider)とは、ECサイトを運営するために必要な機能をクラウドサービスとして提供しているシステムのことです。
InstagramショッピングやYoutubeショッピング連携機能を持つカートASPは、ShopifyやBASE、makeshopなどがあげられます。makeshopは、現時点(2024年6月時点)ではYouTubeショッピング連携機能は実装されていませんが、今後実装予定です。
Instagramショッピングの連携は可能なので、詳しく知りたい方は下記の記事をご覧ください。
Instagramショッピング機能とは?導入方法からメリット・デメリット、広告出稿まで
PtoC(P2C)ビジネスでは、SNSでの情報発信から商品販売までをシームレスに連携させ、売上を最大化させる必要があります。ECサイトを構築する際は、各ASPの機能や料金プラン、使いやすさなどを十分に比較検討しましょう。
まとめ
PtoC(P2C)は、個人の影響力を活かした新しいビジネスモデルとして注目を集めています。SNSの普及やECプラットフォームの発展により、個人が直接消費者とつながり、商品やサービスを提供しやすくなりました。
PtoCを成功させるには、大きな労力やコストがかかります。ただ、一定数の影響力が手に入れば、大きな売上を期待できるでしょう。
SNSが当たり前となった現代では、どんな人にでも影響力を持てるチャンスがあります。興味がある方はぜひPtoCビジネスにチャレンジしてみてください。