ソーシャルコマースとは?日本・中国における市場規模、成功事例を紹介
一般的なECサイトと同様に注文から決済まで、一連の流れがすべてSNSのみで完結する仕組みをソーシャルコマースといいます。今回はソーシャルコマースの市場規模、成功事例について紹介いたします。ソーシャルコマースに興味のある方必見です。
ソーシャルコマースとは
ソーシャルコマースとは、SNS(ソーシャルネットワーキングサービス)とEコマースを組み合わせた言葉です。これまでもマーケティング手法の一つとして、さまざまな企業がSNSアカウントを作成し、そこからECサイトへ誘導したり、ブランドの情報発信をしたりしてきました。また、企業と消費者が直接コミュニケーションをとったり、インフルエンサーが商品の良さを広めたりする目的でSNSが用いられるケースも少なくありません。
ソーシャルコマースは、従来型のマーケティングのみを担うSNSから進化したもので、SNSアカウントのみで商品の販売まで完了する仕組みです。一般的なECサイトと同様に、カート機能や商品の詳細、注文から決済まで、一連の流れがすべてSNSのみで完結できます。
ECとの違い
ソーシャルコマースとECは似ているものの、すでにECサイトを作成している企業にとっても新たにソーシャルコマースを作成するメリットはあります。従来のマーケティング手法としてSNSを活用する場合、SNSを見て「購入したい」と考える人がいても、ECサイトへ移動する前にほかの商品に気が逸れたり、移動するのを面倒に感じたりして、購入を取りやめてしまうケースがあります。
一方、ソーシャルコマースであれば、画面遷移することなく購入まで進めるため、「購入したい」と感じたときに、そのまま決済まで進むことが可能です。つまり、SNSの高い集客性を活かして、購入までつなげられます。企業側にとっても、ソーシャルコマースはSNSの機能を使用して商品販売を行うため、ECサイトよりも構築の工数を抑えられます。
ソーシャルコマースの市場規模
前述のとおり、ソーシャルコマースはその手軽さから広まりを見せつつありますが、実際のところ現在の市場規模はどれくらいなのでしょうか。
以下では、日本と中国におけるソーシャルコマースの市場規模について解説します。
日本国内における市場規模
経済産業省が発表するデータによると、日本国内のEC市場は物販・デジタル分野を中心に増加傾向を示しています。また、いまだソーシャルコマースに限定した市場規模の調査結果はありませんが、総務省の調査では以下のような結果が出ています。
- インターネット普及率:89.8%
- スマートフォン普及率:83.4%
- BtoC-EC市場のスマートフォンでの取引率:50.9%
オンラインショッピングにおいては、半数以上がスマートフォンを使用しているとの結果です。さらにSNSの利用率や利用時間をみても、若い世代のみならず、幅広い世代で増加傾向にあることから、今後国内におけるソーシャルコマースのニーズは高まると予測できるでしょう。
中国国内における市場規模
2021年の日本貿易振興機構による調査レポート(参照:https://www.jetro.go.jp/ext_images/_Reports/01/0f325ff0aaf3c1b8/20210012.pdf)によると、中国のEC市場の規模は世界最大で2020年には約2兆2,970億ドルに達しています。これは、中国全体の小売総額の30%に及んでおり、EC市場が広がっている証拠です。
なかでも、海外からの輸入品を販売する越境ECや一般貿易型ECも盛り上がりをみせており、それぞれ天猫国際(Tmall Global)や淘宝網 (Taobao)などのECプラットフォームが中心となっています。
中国におけるインターネット普及率は70.4%となっており、日本より低い数値ではあるものの、インターネット人口9億8,899万人のうち、EC利用者は7億8,241万人程度です。そのため、今後も巨大市場として注目されることでしょう。
ソーシャルコマースの種類
ソーシャルコマースには、いくつかの種類があります。ソーシャルコマースは発展途上にあり、今後も新たなタイプが生まれる可能性はありますが、まずは既存のタイプからおさえておくとよいでしょう。
以下では、それぞれの特徴やメリット、代表的なサービスについて紹介します。
CtoC型
CtoC(Consumer to Consumer)型とは、一般消費者どうしのソーシャルコマースです。メルカリやヤフオクなどのサービスがCtoC型のソーシャルコマースにあたります。
いずれも企業がサービスの提供主となっていますが、あくまで取引の場を提供するだけにとどまり、商品の購入に関するやりとりは個人間で行います。そのため、安価に取引できる点や中古品の出品数が多い点が人気の要因です。
運営企業は販売手数料を徴収することで利益を得ており、消費者は企業が提供する場で取引するため、トラブルの発生時には相談できる点もメリットです。
SNS型
SNS型とは、SNS上でそのまま商品を購入できるソーシャルコマースです。メリットとして集客と購入を同時に行える点があげられます。
2022年4月現在、SNS型のECを展開しているのは、InstagramやFacebook、PinterestなどのSNSです。普段利用しているSNS上で気に入った商品をすぐに購入できる手軽さから人気となっています。
共同購入型
共同購入型とは、一定数のユーザーが同じ商品を購入することで割引になるソーシャルコマースです。グループ購入型のソーシャルコマースとも呼ばれています。
人数が集まれば集まるほど、割引率が上がるサービスもあり、購入したい人が周りの人に購入を呼びかけることで宣伝効果も期待できます。共同購入型の代表例は、グルーポンやPinduoduoなどです。
会員制型
会員制型とは、消費者が会員費を払わないと購入できないソーシャルコマースです。会員費を払って、限定販売の商品を手にできたり、お得に買い物ができたりする点がメリットです。
また、企業側にとっては商品の売上だけでなく、会員費でもマネタイズができるメリットがあります。日本国内ではコストコが会員制型のサービスを提供しているほか、海外では中国の雲集(Yunji)などのサービスが会員制型として知られています。
KOL型
KOL(Key Opinion Leader)型とは、インフルエンサーを活用したソーシャルコマースです。日本国内でもInstagramやYoutubeなどで人気のインフルエンサーが商品を紹介し、消費者へ購入を促す手法がとられています。
ユーザー参加型
ユーザー参加型とは、クラウドファンディングなどを通じて、消費者が商品の開発段階から企画や投資に参加するソーシャルコマースです。クラウドファンディングでは、売り手が商品の開発や販売を提案し、そのなかから消費者が選択し投資を行います。そのため、消費者が求めている商品を開発できるうえ、開発費用を消費者からの投資でまかなえる点がメリットです。
有名なクラウドファンディングサービスとしては、国内ではMakuake、海外ではアメリカのKickstarterなどがあげられます。
O2O型
O2O(Online to Offline)型とは、オンライン上の商品レビューから実店舗に送客するソーシャルコマースです。SNS上で完結するビジネスモデルではありませんが、マルチチャネルの一環として注目されています。
企業が発信する広告や宣伝ではなく、実際に商品を使用したユーザーのレビューから訴求することで購入に結びつきやすい点が特徴です。O2O型のソーシャルコマースとしては、TwitterやInstagramの大手SNSサービスのほか、アパレル特化型のMotiloやFashismが知られています。
レコメンド型
レコメンド型とは、消費者が過去に購入した履歴にもとづき、関連する商品を「おすすめ商品」として表示させることで購入を促すソーシャルコマースです。O2O型と同様に、おすすめ商品のページを閲覧すると、過去の購入者のレビューを閲覧できるため、自分に合った商品を見つけられます。
レコメンド型の代表例は、Amazonやヤフーショッピングなどです。トップページや商品ページに関連商品を掲載することによって、ユーザーの興味をひいています。
ソーシャルコマースに適したプラットフォーム
ソーシャルコマースは、今後のEC市場において、大きな役割を担う可能性が高いビジネスモデルです。しかし、国内でソーシャルコマースを行うのに適したプラットフォームはどのようなものがあるのでしょうか。
日本はソーシャルコマースの開発において遅れをとっており、購入まで完結できる仕組みを実装しているSNSはありません。ただし、ソーシャルコマースへの展開が予想されているプラットフォームはいくつか存在します。
以下では、将来的にソーシャルコマースに適したプラットフォームになるとみられているサービスを中心に紹介します。
世界最大級のSNSとして知られるFacebookでは、個人の実名アカウントのほか、大手企業も商用アカウントを作成しています。Facebookには、「Facebookショップ」という機能がありますが、日本版のプラットフォームではまだ決済までは行えません。
しかし、ショップの作成、ショップ内における商品カタログや広告の表示、ECサイトへのリンクは実装できます。いずれも無料で利用できる機能のため、ソーシャルコマースのように利用することも可能です。
Facebookはサービス自体の歴史が長いこともあり、メインユーザーの年齢層は比較的高めのSNSです。Facebookは、アメリカでもっとも利用されているソーシャルコマースでもあるため、将来的には日本国内でのサービス展開も期待されています。
URL | https://www.facebook.com/ |
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アクティブユーザー数 (全世界) | 29億1,000万人※2021年12月時点 参照:https://investor.fb.com/investor-events/default.aspx |
TikTok
TikTokは、中国生まれのショートムービー配信プラットフォームです。とくに若い世代を中心に広がっており、日本でも人気が高まっています。
中国では、ソーシャルコマース機能が搭載されており、インフルエンサーによるKOLが好評です。ライブコマースも利用でき、双方向のコミュニケーションをとりながら配信できる仕組みが実装されているため、インフルエンサーを身近な存在として認識できる点が好評の理由となっています。
TikTokのソーシャルコマースは、中国以外ではまだ試験段階ではありますが、将来的には商品のアップロードから注文受付・配送まで一括して行えるようになる見込みです。
URL | https://www.tiktok.com/ja-JP/ |
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アクティブユーザー数 (全世界) | 10億人 ※2021年9月時点 参照:https://newsroom.tiktok.com/ja-jp/1-billion-people-on-tiktok-thank-you |
Instagramは、写真や動画のアップロードや共有を通して交流するSNSです。若い世代だけでなく、女性を中心に、広い世代に親しまれています。
Instagramは、Facebookと同じく、Metaが提供するプラットフォームとして知られています。そのため、Instagramでも「Instagramショップ」を開くことが可能です。
Facebookと異なる点として、Instagramでは商品の画像に「商品タグ」を付けられます。ユーザーは商品タグをタップすることで商品購入ができ、ソーシャル経由で販促をするには便利な機能です。しかし、こちらも決済機能は未実装となっており、ECサイトへの遷移が必要です。
URL | https://www.instagram.com/ |
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アクティブユーザー数 (全世界) | 10億人 ※2018年6月時点 参照:https://about.instagram.com/blog/announcements/welcome-to-igtv |
Pinterestは、インターネット上で気に入った写真を、自分のアカウント内のボードにピン止めし共有することのできるSNSです。日本では、ECサイトの情報から商品価格や在庫数を表示する「プロダクトピン」、プロフィール上に購入可能な商品を提示する「ショップタブ」に対応しています。海外では、ECサイト構築用CMSのShopifyと連携できる機能も実装されているので、日本でも対応される日を待ちましょう。
URL | https://www.pinterest.jp/ |
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アクティブユーザー数 (全世界) | 4億4,400万人 ※2021年11月時点 参照:https://investor.pinterestinc.com/investor-overview/default.aspx |
LINE
LINEは、会話調の吹き出しで友達とメッセージを送りあえるメッセンジャーアプリです。企業の公式アカウントもあり、友だちからのメッセージのように、新商品やキャンペーン情報を配信できます。
LINEでソーシャルコマースができるサービスは、「LINE LIVE」という動画配信サービス内におけるライブコマースや、友だちにLINE上で購入した商品を送れる「LINEギフト」などです。
国内のメッセージアプリで圧倒的なシェアを誇るLINEは、大手ECモールのヤフーショッピングとの連携も予定しており、新しいサービスに注目していく必要があります。
URL | https://line.me/ja/ |
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アクティブユーザー数 (全世界) | 1億9,000万人 ※2021年12月時点 参照:https://www.z-holdings.co.jp/ja/ir/presentations/earnings/main/02/teaserItems1/0/linkList/01/link/jp2021q3_presentation.pdf |
ソーシャルコマースの成功事例
続いて、実際にソーシャルコマースを利用して成功した事例を3つ紹介します。ソーシャルコマースの導入を検討している場合は、ほかの企業の成功事例からヒントを得るのもポイントです。
※こちらの事例では、makeshopで構築したECサイト以外についてもご紹介しております。予めご了承ください。
ルイヴィトン
フランスの高級ファッションブランドとして知られるルイヴィトンは、中国でソーシャルコマースを行い成功を収めました。具体的な施策の内容は、2019年に「小紅書(Little Red Book)」で公式アカウントを作成して行ったKOLです。
結果としては数多くのフォロワー獲得に成功しており、同社にとって影響力のあるプラットフォームとなりました。その後、2020年にはライブストリーミングセッションも行い、約70万人が視聴しました。
歴史のあるハイブランドにもかかわらず、新たな販売スタイルに積極的に取り組む姿勢が話題となっています。
17kg
17kgは、韓国を中心に展開する、プチプラファッションを扱うセレクトショップです。10代から20代の若い女性に人気となっています。
17kgでは、Instagramを活用して自社製品のコーディネートを配信し、約50万人のフォロワーを獲得しています。配信したコンテンツには「商品タグ」を付け、すぐに購入できるよう誘導している点もポイントです。
さらに、Twitterでも同様の配信を行っており、チャネルの多様化を図っています。数多く投稿している点が特徴的で、ユーザーに親近感を与えることにも成功しています。
iCONOLOGY
iCONOLOGYは、岐阜県にある刺繍工房の3代目店主が立ち上げたアパレルブランドです。Instagramを活用し、商品の写真に「商品タグ」を付けてECサイトへの導線としています。
また、新製品の発売の前日にインスタライブを配信してアピールするなど、ライブコマースに近い手法を取り入れているのも特徴です。Instagramと並行してTwitterでも配信を行っており、商品だけでなく製作の裏側を見られるコンテンツは人気の要因となっています。
まとめ
オンラインで商品を販売する際は、どのように集客して販売までつなげるかがカギです。従来、集客はSNS、販売はECサイトと別々で管理していましたが、SNSで集客と販売が行えれば、より収益につながる可能性が高まります。
また、日本国内においてソーシャルコマースはまだブルーオーシャンです。いちはやくチェックし、他社に先駆けて導入していくとよいでしょう。