SIPSとは?SNS時代の消費者行動モデルや構成する4つのプロセスを徹底解説

SIPSはAIDMAなどで知られる消費者行動モデルのひとつで、近年では当たり前となったソーシャルメディアを利用する人々の購買行動に特化し提唱されました。現代の消費者のリアルな購買行動を読み解き、販売促進につなげましょう。

SIPSとは

SIPSは、SNSが広く普及している環境において、マーケティング上重視されている消費者行動モデルのひとつです。
消費者行動モデルとは、消費者がどのように商品やサービスを認知して、その後どんなプロセスを経て購買に至るかを共通の流れに落とし込んだものです。

消費者行動モデルにのっとって市場やデータを分析すると、消費者が何を求めているのかや、商品やサービスを売りやすくする仕組みの発見につながります。

SIPSの特徴は、参考とする消費者像がSNS(ソーシャルメディア)のユーザーであるという点です。
TwitterやInstagramといったソーシャルメディアの利用者が、どのような心理と行動を経て商品・サービスを購買するに至るかの過程を、「共感」「確認」「参加」「共有・拡散」の4つにわけて考えます。

SIPSの4つのプロセス

SIPSは、「Sympathize(共感する)」「Identify(確認する)」「Participate(参加する)」「Share&Spread(共有・拡散する)」の頭文字とった言葉です。
この4つのステップは、ソーシャルメディアという環境ならではの特徴や機能によってそれぞれの段階で、ユーザーがどのように考え行動するかを解説します。

プロセス1.Sympathize(共感する)

ユーザーが商品やサービスを知って、対象に魅力を感じるフェーズです。SIPSでは、このときユーザー心理におこる現象を「共感」と定義づけます。

ソーシャルメディアのマーケティングは、消費者から「共感」を得るところからスタートします。「共感」してもらうためには、商品やサービスの品質や価格を改善するのはもちろん、企業そのものに対して消費者がよい印象をもてるような活動が必要です。

広報活動や社会貢献活動は、「共感」を高めるのにつながるアクションとなります。商品やサービス単体だけでなく、その背景にあるストーリーや、企業がもつポリシー・メッセージなども消費者の意思決定に影響を与える要素と考えられるでしょう。

また、SIPSにおいて重要なのは、その企業の商品やサービスが誰から話題にされているかという点です。有識者や友人・知人など、発信している人物の信頼度が高いほど、ユーザーにとっての情報の価値も高まります。

とくにSNS上で大きな影響力をもっている存在が、インフルエンサーです。より多くのユーザーから「共感」を得るため、インフルエンサーマーケティングに注力する企業も増えています。

プロセス2.Identify(確認する)

消費者が商品やサービスに「共感」したら、次にやってくるのは「確認」のステップです。
ここ数年、消費者は購買に対して慎重になってきています。この傾向は、市場に商品や情報があふれていること、不況が続いていること、環境への配慮などさまざまな要因によってつくられているものです。

そのため、インフルエンサーの投稿や広告で目にした商品を直感的によいと感じても、すぐに注文するわけではありません。本当に買う価値がある商品であるかを、検索などを通して「確認」するのです。

参考にされる情報源はさまざまです。企業や店舗そのものによる発信ももちろんですが、口コミやメディアの掲載情報のほか、友人や家族といった周囲のひとの意見が影響を与えるケースもあります。

SNS上の投稿を重視するユーザーも多いため、このあとに続くプロセス「参加」を促すことが重要となるのです。

プロセス3.Participate(参加する)

消費者に期待する行動は、購買だけに留まりません。「共感」と「確認」に続くフェーズは「参加」と呼ばれます。「参加」とは、消費者から商品やサービスへの反響を総称したもので、これをどれだけ集められるかを重視しているの、SIPSの特徴的な点のひとつです。

たとえば、あるユーザーがSNS上で見つけた商品情報に「いいね」や「RT」をしたとします。仮にユーザー自身が商品を購入していなかったとしても、「いいね」や「RT」のアクションが結果的にほかのユーザーに影響を与え、新たな購買につながると考えられるのです。

「参加」というプロセスは、ユーザー一人ひとりが情報の発信者にも受信者にもなり得るという、ソーシャルメディアならではの特徴から重視されています。

「参加」を集めるためには、自らの積極的な発信活動と、消費者に対して行動を促すオファーが効果的です。「いいねしてほしい」「フォローしてほしい」という積極的な呼びかけが、消費者からのアクションを引き出します。

プロセス4.Share&Spread(共有・拡散する)

ソーシャルメディアの中で最終的に目指すのは、ビジネス情報を広く「共有・拡散」させていくことです。
商品やサービスが「共有・拡散」されると、より幅広いユーザーから認知してもらえるようになり、そのぶん新しい「共感」や「参加」を得るチャンスが広がります。

また、多くのひとから「共有・拡散」されているという事実は、それだけで情報への信頼度を高めるため、「確認」段階においてもよい影響を与えるといえるでしょう。

なお、「共有」と「拡散」には微妙な違いがあります。「共有」は特定のコミュニティ内(フォロワーなど)の中で行われるものですが、「拡散」はコミュニティの垣根をこえて情報が広く伝わっている状態です。“バズ”る、というワードで表されることもあります。

「拡散」にまで至ると、情報を発信・伝播している一人ひとりの存在感は薄まり、コンテンツそのものがユーザーによって評価されていると考えられます。

SIPSを構成する参加者のレベル

SIPSでは、消費者に商品やサービスを購入してもらうだけでなく、いかにSNS上で話題にしてもらって情報を拡散させるかが重要です。ビジネスをとりまくムーブメントに「参加」してくれる人が多いほど、得られるメリットも大きくなると考えられます。

「参加」するユーザーのレベルは4段階です。4つのレベルはピラミッド状の階層になっており、最下層のユーザーのすそ野は広く、より上の段階にいくほどビジネスへのエンゲージメントが高くなります。

最下層:Participant(ゆるい参加者)

最下層に属しているユーザーはParticipant(ゆるい参加者)と呼ばれます。

Participantが行うのは、以下のようなアクションです。

  • サンプルをもらう
  • トライアル利用をする
  • 軽い気持ちでフォロー、投稿に反応(いいねやRTなどのシェア)をする
  • 自分と関連するキャンペーンに参加する

Participantは見込み顧客のような位置づけと考えてもよいでしょう。発信者とはゆるくつながっており、場合によってはその次のステップ(購買)に進む可能性をもっています。

三段目:Loyal Customer(支援者)

Fanのエンゲージメントがさらに高まると、Loyal Customer(支援者)になります。
ビジネスに対してはかなり好意的で、長期的に購入を繰り返しており、LTVも高めです。商品やサービス単体に限らず、企業自体のブランディングやストーリーを支持しています。

従来的な呼び方だと、お得意さん、といった位置づけとなるでしょう。長期にわたって会員登録をしていたり、商品の定期購入に申し込んでいるほか、ときにはビジネスに対して建設的な意見を提唱することもあります。

最上層:Evangelist(伝道者)

最上層にいるのが、Evangelist(伝道師)です。伝道師、という言葉どおり、この階層に属するユーザーは積極的に商品やサービスの魅力を他者へと伝えてくれます。

  • 自らファンコミュニティーをつくる
  • 商品やサービスの布教活動を行う

などは、Evangelistがとる典型的なアクションです。
Evangelistの存在は、新規顧客の獲得に力を発揮します。Evangelistは商品やサービスに関するポジティブな発信をたくさんしてくれるので、それだけより多くのユーザーの「共感」や「参加」を呼び込むきっかけが増えるのです。

SIPSが実現する例

ソーシャルメディアでは、日々あらゆる場面でSIPSが実現しています。
たとえば、あるお菓子屋さんが、お取り寄せケーキの画像をSNSに投稿したとしましょう。
それをみたユーザーは、まず「美味しそう」「食べたい」という「共感」を抱きます。ユーザーは購入する前に、「本当に美味しいのか」や「このお店はスムーズに注文を受け付けてくれるのか」などの疑問を解消するため、ほかのユーザーの投稿や口コミを「確認」します。

「確認」のフェーズにうつったユーザーは、購入の後押しとなる情報を発見したらケーキを注文してくれるでしょう。もし注文に至らなかったとしても、ケーキを紹介する投稿に「いいね」などのリアクションをとっていれば、ほかのユーザーのタイムラインにも表示される可能性があります。これが「参加」のフェーズです。

そして、いざ注文したケーキを食べたユーザーが、「美味しい」と思った感想をソーシャルメディアに「共有」し、その情報が広く「拡散」する。「拡散」された内容が新しいユーザーへ届き、さらに「共感」を生む…というのがSIPSの理想的なサイクルとなります。

このように、ソーシャルメディアだからこそ成り立つ発信者と消費者の相互関係によって、商品やサービスの情報が広まっていくプロセスをあらわしたものがSIPSなのです。

その他の主な消費者行動モデル

マーケティングに役立つ消費者行動モデルには、さまざまな種類があります。この記事で紹介しているSIPSは、比較的新しくあらわれたものです。

消費者行動モデルもそうですが、どんなマーケティングフレームワークであっても、ひとつに絞って参照すればよいというものではありません。消費者は、自覚的にも無自覚的にも、生活のなかのあらゆる要素から影響を受けて行動や意思決定をしているためです。そのため、複数のフレームワークを組み合わせて、多角的にビジネスや市場の分析を行う必要があります。

以下に、SIPSのほかによく用いられている消費者行動モデルを紹介していきます。ぜひ組み合わせて、マーケティング活動に取り入れてみてください。

VISAS(ヴィサス)

VISASは、「Viral(口コミ)」「Influence(影響)」「Sympathy(共感)」「Action(行動)」「Share(共有)」の5つの頭文字から成っています。口コミに焦点をおき、消費者行動をモデル化した考え方です。この記事で紹介するなかでは、SIPSと似たモデルといえるでしょう。

VISASのはじめのステップ「口コミ」は、各SNSや「食べログ」などの口コミサイト、GoogleMAPの口コミなどに投稿される書き込みを指します。消費者が、実際に商品やサービスを利用したユーザーによる発信に影響を受けて購買し、自身がまたその感想を口コミとしてシェアする、という一連の流れがVISASです。

SIPSとの大きな違いは、VISASにおける「行動」は購買にフォーカスを置いているという点です。消費者によって商品・サービスが購入されるとき、その行動に口コミという要素が与える影響を法則化したもの、と考えるとよいでしょう。

AIDA(アイダ)

AIDAの法則は、多くの消費者行動モデルの起源となる法則です。その歴史はマーケティングのフレームワークとしては古く、1900年代前半にまでさかのぼります。そのため、いまの時代にはそぐわないという意見もあります。

AIDAを構成するのは、「Attention(注意)」「Interest(関心)」「Desire(欲求)」「Action(行動)」です。現在のように消費者が自ら情報を得る手段がなかった環境において、消費者がいかに商品・サービスを認知し、そこから購買に至るかのプロセスが4つのステップにわけて定義されています。

AIDAが提唱されるようになった当時、消費者は企業の営業活動や広告をとおして商品やサービスを認知していました。「注意」の段階では、まだ商品・サービスを知らない消費者に、まずはその存在を知ってもらうところから始まります。

商品・サービスを知った消費者が、興味を抱きはじめるのが「関心」のフェーズです。そこからさらに魅力を知り、商品やサービスによって提供される価値が自分のニーズや好みに合致することがわかると、消費者の心理は「これが欲しい」という「欲求」の段階へとうつります。そして最終段階として、実際に店舗を訪れたり購入をするという「行動」が発生するという流れです。

AIDMA(アイドマ)

AIDMAは、AIDAにM、「Memory(記憶)」を加えた消費者行動モデルです。
「記憶」のステップは、商品・サービスをいかに消費者に印象づけるかが大切だという考えのもと加えられています。

AIDMAの法則が提唱された1920年代は、交通も通信も今のようには発展しておらず、消費者が商品を欲しいと思ってからすぐに注文できるとは限りませんでした。

そのため、商品の情報が消費者に届いた段階で強い印象を残して、購入できる環境になるまで記憶してもらうことが重要視されていたのです。

AIDAとAIDMAのおもな違いは消費者の購買タイミングです。AIDAの場合は「今、その場で買ってもらうこと」、AIDMAの場合は「いずれ必要なとき/購入できるタイミングがきたときに買ってもらうこと」を想定しています。

AISAS(アイサス)

AISASの法則は、インターネットが普及したことによって提唱されるようになりました。
AISASを構成しているのは、「Attention(注意)」「Interest(関心)」「Search(検索)」「Action(行動)」「Share(共有)」の5つです。

AIDAの法則と比較すると、「欲求」のあった場所は「検索」に置き換わり、「共有」という新たなステップが加えられています。

「検索」は字の通り、WEB上の検索行為のことです。消費者は商品・サービスについて興味を抱くと、購買前に検討材料を集めるため、インターネット検索をします。企業は、消費者が購入に対して前向きになってもらえるように、WEB上にポジティブな情報が掲載されるよう対策しなくてはいけません。

そして「共有」は、SIPSやVISASでも重要視されているように、消費者による商品・サービスの感想がほかのユーザーへシェアされることを表します。

まとめ

SNS時代におさえておきたい消費者行動モデル、「SIPS」について解説しました。
ソーシャルメディアの利用は年々活発化してきており、消費活動と深く結びついています。SIPSにもとづいてユーザーの心理や行動を理解することは、きっとビジネスを発展させるのに役立つでしょう。
ぜひこの記事を参考に、SNSを活用したマーケティングに挑戦してみてください。

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