パレートの法則を身近な例から解説!実際の使い方や注意点、おすすめの書籍も紹介
パレートの法則は、「全体を構成する要素のなかで、2割によって成果(数値)が生み出される」という考え方です。どのような歴史があるのかや身近な例など、パレートの法則について詳しく解説します。おすすめの書籍も紹介しておりますので、ぜひ参考にされてください。
パレートの法則とは
パレートの法則は、「全体を構成する要素のなかで、2割によって成果(数値)が生み出される」という考え方です。マーケティング施策に活用されることも多いパレートの法則ですが、ビジネス以外にも世の中のさまざまな事柄にあてはまるといわれています。
パレートの法則の歴史
パレートの法則は、イタリアの経済学者・社会学者であるヴィルフレド・パレート氏が、1896年に論文で発表しました。ヴィルフレド・パレート氏は、欧州における経済統計の分布を調査したところ、「全体の富の8割を上位2割の人口が保有し、8割の人口で残りの2割をわけている」という、所得分布の経験則を発見します。
さらに園芸家でもあったパレート氏は、育てていたえんどう豆の収穫量をみて、「収穫の8割が全体の2割のサヤから収穫された」ということに気づいたともいわれています。
パレートの法則の身近な例
パレートの法則には、以下のような複数の別名があります。
- 80:20の法則
- 20:80の法則
- 8:2の法則
- 2:8の法則
- ニッパチの法則
- ばらつきの法則
なお、「パレートの法則」という名称が一般的に広まったのは、提唱者であるヴィルフレド・パレート氏が亡くなったあと、1950年代にアメリカの工学者ジョセフ・ジュラン氏が自身の品質管理の概念を説明する際、引例として研究結果を使用したことがきっかけとされています。
ビジネスにおけるパレートの法則の例
以下では、ビジネスにおけるパレートの法則の例を紹介します。
ビジネスにパレートの法則を活用することで、リソースやコストの配分を把握して最適化でき、顧客のセグメンテーションなどに役立てられるでしょう。
ビジネスでよく用いられる法則の例としては、以下の3つがあげられます。
例1.会社業績の8割は2割の社員によって作られている
パレートの法則に会社の業績を照らし合わせてみると、業績の8割は全社員のうち2割の社員によって作られていると考えられます。この2割の社員はビジネスにおけるパフォーマンスが高く、どの社員が会社にとって重要な役割をしているのかを把握することが重要になります。
能力の高い社員を把握している場合は、より高い成果をだせるように適材適所のポジションに配置するなど、環境を整えるとよいでしょう。
例2.売上の8割は2割の顧客によって作られている
会社の売上高をパレートの法則にあてはめてみると、売上の8割は2割の顧客によって作られていることになります。売上の8割が2割の顧客で作られているのであれば、2割の顧客は「優良顧客」と考えられるでしょう。
今回の場合であれば、2割の優良顧客に対してより多くの時間を割いたり、丁寧な対応を心がけたりと、施策を考える材料としても有効です。
売上の8割は2割の商品によって作られている
会社で扱っている商品にパレートの法則を適用すると、全体の売上の8割は2割の商品の売上で成り立っていると考えられます。
どのような企業でも、「すべての商品がバランスよく売れる」ということはありません。売れ行きのよい商品もあれば、そうでない商品もあるでしょう。
売れ行きのよい人気商品の宣伝に力を入れたり、2割の商品が「なぜ売れるのか?」という”売れる理由”を分析してみたりと、注力すべきポイントをみつけるヒントにもなります。
パレートの法則の使い方
パレートの法則を自社にあてはめて考えるとき、「具体的な使い方がわからない」と悩む方もいるかもしれません。
パレートの法則を活用する際は、まず「予測」することからはじまり、次に「施策・計画を立案」する流れとなります。
以下で、具体的な使い方について解説します。
使い方1.分布の予測
まずは自社で蓄積されたデータから、どの部分にパレートの法則が成立しているかを考えてみましょう。
とくに売上や客数、商品、サービスなどの集客につながる部分は、パレートの法則から重要と考えられる要素を導きやすくなります。
具体例をあげると、以下のような分布が予測できます。
- 居酒屋の売上の8割はすべての客数の2割の顧客で生み出している
- 美容室の売上の8割は全メニューのうち2割のトリートメントメニューで成り立っている
ただし、パレートの法則がどの部分に成立しているかは業種や職種によって異なるうえに、すべての事柄に該当するわけではないので注意しましょう。
使い方2.予測分布から施策の立案
パレートの法則に照らし合わせて重要な2割の要因が見極められたら、次に施策を立案します。
ここでは、2割にどのような施策を講じるかをメインに考え、具体的な戦略に落とし込みます。
たとえば、以下の施策が考えられるでしょう。
- 居酒屋の売上を生み出す2割の顧客に特典や割引のDMを送る
- 美容室の売上を作り出す2割のトリートメントメニューの品質を高める
重要なのは、「売上を作る2割に注力すること」です。売上を支える2割にとって効果的な施策を検討し、実施することで効率よく売上アップが見込めるようになります。
パレートの法則の注意点
パレートの法則をビジネスに活用する際、いくつか注意しておきたいことがあります。
正しく活用すれば効果が得られるものでも、間違えて理解したり考え方がズレてしまったりすると、見込み違いの結果を導きかねません。
パレートの法則を活用する際には、以下の3つの注意点を踏まえておきましょう。
注意点1.パレートの法則はあくまで経験則
パレートの法則は、あくまでも経験則(経験によって見出される法則)であり、必ずしもすべての事象がこの数値にあてはまるというものではありません。
実際に調査してみると「8:2」にきっちりわかれないことも多く、無理に当てはめる必要もないでしょう。
極端にいえば、”仮説”として捉えるくらいでもよいかもしれません。
ただし、パレートの法則とは異なるからといって、まったく役に立たないわけではなく、「このような傾向がある」という判断基準の1つとして活用できます。
注意点2.ロングテールビジネスを理解する
ロングテールビジネスとは、売上の貢献度は低いものの、長期間に渡って利益をもたらす商品やサービスのことです。
尻尾のように横に長く伸びた状態を表現して「ロングテール」と呼ばれており、インターネットでの販売手法として使われることが多い概念です。
短期的には大きな成果を生まない顧客や商品だとしても、長期的な売上維持に貢献してくれる欠かせない存在であり、ECサイト運営やBtoC取引において重要な考え方といえるでしょう。
注意点3.下位8割が不要とは限らない
ロングテールビジネスにも通じる考えですが、売上を作る2割以外の残り8割が不要とは言い切れません。
たしかに、売上につながりやすい2割に注力することで効率よく利益が生み出せるでしょう。
しかし、いくら「居酒屋の売上の8割はすべての客数の2割の顧客で生み出している」といっても、残りの8割が来客しなければ全体の売上は下がってしまいます。
そのため、大切なのは残り8割の顧客ニーズや動向の分析もおこない、「どのような要素が足りないのか」を把握することであり、安易に切り捨てないようにしましょう。
働きアリの法則(2:6:2の法則)
働きアリの法則はパレートの法則から派生した概念で、組織構成に使われることが多いです。
別名「2:6:2の法則」とも呼ばれるとおり、組織や集団を次のような割合にわけられるという考え方です。
- 働き者の社員:2割
- 普通に働く社員:6割
- 怠ける社員:2割
この法則の不思議なところは、怠ける社員の2割を排除すると、残った社員のなかからまた怠ける社員がでてくることです。逆に、よく働く社員を残したとしても、割合は法則どおりで変わりません。
一見すると怠ける社員は会社に貢献していないように感じますが、実は上位8割を支えるための底上げとして重要な役割と考えられます。
パレートの法則をより深く学べる書籍3選
最後に、パレートの法則にまつわる書籍を3冊紹介します。
パレートの法則について、さらに理解を深めたい方はチェックしてみてください。
『新版 人生を変える80対20の法則』 リチャード・コッチ
世界的なロングセラー本として多くの人に読まれている本書。
パレートの法則について幅広く理解でき、ビジネスや人生に応用することで成功へと導く手引きとなります。
本書は日常生活までパレートの法則を落とし込んだ内容となっているため、ビジネスの成長や効率アップだけでなく、自分自身の人生を見つめ直したい方にもおすすめです。
『80対20の法則』 ポール・マクナーニ
パレートの法則に特化した書籍のなかでも、読みやすいと評判の本書。
著者のポール・マクナーニは、世界のトップ企業のマッキンゼー・アンド・カンパニーでの最高位コンサルタント経験をもつ人物です。
本書では、パレートの法則を利用して「少ない労力で高い成果を目指す」ための実践方法を解説。
『80対20の法則』の重要な20%の部分をみつけるための、具体的な手がかりが解き明かされています。
『80対20の法則を覆すロングテールの法則』 菅谷義博
パレートの法則の逆説を唱える、ロングテールの法則について解説された書籍です。
インターネット普及によってコミュニケーションコストが下がることで実現する、ロングテール現象を生かしたマーケティング戦略。
ロングテールを用いた戦略の考え方や売上があがる論理、具体的戦術などが、詳細に書かれています。
Webマーケティングに活用しやすいロングテールの法則の理解を深めたい方や、パレートの法則との違いを見比べたい方にもおすすめです。
まとめ
「パレートの法則」という言葉だけを聞くと身構える人もいるかもしれませんが、正しく理解することでビジネスや実生活に活かせるようになります。
法則とはいえ必ずしも2割と8割にわかれるわけではありませんが、大まかな傾向を把握するだけでも、考えるべきポイントやとるべき戦略、削減すべき業務の把握に役立ちます。
さらに理解を深めたい方は書籍で知識を得つつ、パレートの法則を活用してマーケティングや営業の効率化を目指しましょう。