アウトソーシングの基礎知識と導入して失敗しないためのポイントを紹介
「業務の生産性を高めたい」
「業務の人件費を減らしたい」
ビジネスの競争力が求められる中、定型業務に時間を取られてしまい…コア業務に集中できていない企業も多いですよね。社員がかかえている業務をアウトソーシングすることで、生産性の高い業務に集中できるようになります。ただし、委託する業務にズレがあると、かえって煩雑になり失敗するケースも珍しくありません。
本コラムでは、アウトソーシングの基礎知識と、失敗しないためのポイントをご紹介します。最後までご一読ください。
アウトソーシングとは?
アウトソーシング(outsourcing)とは、直訳すると「外部委託」の意味です。自社に不足している人材やスキルを外部から調達することで生産性が向上し、トータル的にコストカットが期待できます。
アウトソーシングできる業務は年々増えていて、たいがいの業務はアウトソーシング可能です。
アウトソーシング市場規模は伸び続けている
IT企業を中心にアウトソーシングは浸透しており、むしろアウトソーシングしないと競争に勝ちづらくなってきました。IDC Japanの調査によると、国内ビジネス・プロセス・アウトソーシング(BPO)サービス市場において、2021年の同市場は前年比5.1%増の8856億円とのこと。2021年~2026年の年間平均成長率は3.9%、2026年の同市場規模は1兆717億円と予測しています。
コロナ禍の影響で福利厚生など一部アウトソーシングの伸び率が鈍化していますが、リモートワークやEC化によりBPOサービスの市場規模は伸び続けています。
アウトソーシングの需要が高まっている理由
アウトソーシング市場が伸び続ける理由は、慢性的な人材不足です。少子高齢化の加速で労働人口の減少し、あらゆる業種で人手不足が問題になっています。競争が激化する中で企業は少ないスタッフでさまざまな業務を遂行することが求められることが背景にあります。
持続的な経営を考えると、既存の商品やサービスだけに依存しては衰退しかありません。コロナ禍で小売やメーカーのEC化が高まりましたが、ECの開発や運営、プロモーションには専門のノウハウは欠かせないですよね。新しい市場やシェア拡大を目指す目的でアウトソーシングする動きも目立ちます。
アウトソーシングの3種類「BPO」「KPO」「ITO」
アウトソーシングは大きくわけて次の3つの種類があります。
- BPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)
- KPO(ナレッジ・プロセス・アウトソーシング)
- ITO(アイティー・アウトソーシング)
ひとつずつ見ていきましょう。
BPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)
BPO(Business Process Outsourcing)とは、顧客サポートや受注管理など、自社の業務プロセスにおけるアウトソーシングを指します。EC事業を例にあげると、おもに次の業務が該当します。
- 商品情報登録業務
- 受注管理業務
- サポート業務
- 集客(リスティング広告の運用、ブログの記事作成と運営など)
BPOは、入力・チェック・運用などマニュアル化しやすい業務が該当します。アウトソーシングすることで生産性の改善が期待できます。
KPO(ナレッジ・プロセス・アウトソーシング)
KPO(knowledge process outsourcing)は、データ分析から次の施策立案や、新しいモノ・コトを創造する知的業務のアウトソーシングを指します。データを収集し分析、施策の提案というマニュアル化しづらい業務がKPOに分類され、アウトソーシングすることで付加価値をもたらします。
KPOサービスを行うベンダーは2000年代初めから欧米企業を中心に拡大し、現在では世界市場規模が170億ドルに達すると言われています。おもにインドや中国に拠点を構えて、高学歴で賃金の安い人材を活用し24時間体制でサービスを行う特徴がみられます。
ITO(インフォメーション・テクノロジー・アウトソーシング)
ITO(Information Technology Outsourcing)は、システム開発やサーバー保守などのIT関連のアウトソーシングを指します。ITOは主に次の6つの形態があります。
形態 | 内容 | |
---|---|---|
1 | フルアウトソーシング | システム設計・開発・運用のほぼすべてを委託 |
2 | 運用アウトソーシング | サーバーやOSなどシステムのインフラ運用を委託 |
3 | 常駐アウトソーシング | 外部ベンダーのスタッフが自社に常駐し、技術的なサポートを受ける |
4 | ホスティング | サーバーをレンタルし、運用や保守を外部ベンダーへ委託する |
5 | ハウジング | 自社所有のサーバーを、外部ベンダーのデータセンターなどに間借りする |
6 | ヘルプデスク | 問合せやクレームなどの対応を委託する |
自社にシステム開発・運用できる人材が乏しい場合、システムを一括、または一部分をアウトソーシングするのかを細かく選択することができます。IT分野は慢性的な人手不足を抱えており、自社で抱え込むのはコスト的にもリスクが高まっています。適材適所でアウトソーシングする手法が注目されています。
アウトソーシングの手法と業務形態
アウトソーシングの形態は、次の5つがあります。
形態 | 内容 | |
---|---|---|
1 | シェアードサービス | 企業グループの各社で行われている間接業務を1カ所に集約して、まとめて実施する形態 |
2 | コソーシング | 委託側に対等な立場で利益を配分し業務を請け負わせる経営手法 |
3 | マルチソーシング | 業務の種類に合わせてアウトソーシングする委託先を複数選定する形態 |
4 | クラウドソーシング | インターネット上で不特定多数に業務を発注する業務形態 |
5 | オフショアアウトソーシング | 海外に全部、または一部の業務を委託する手法 |
アウトソーシングと混合されやすいものに「人材派遣」があります。双方の違いは業務の管理を「社内の人間が行うか」、あるいは「社外の人間が行うか」です。
アウトソーシングでは、依頼する業務のすべてを委託するのに対し、人材派遣では、作業するスタッフのスペース確保や業務管理などを委託した企業がすべてを担います。
アウトソーシングを活用するメリット
アウトソーシングのメリットは次の3点があります。
- 専門的なノウハウを入れることができる
- コア業務に集中できる
- ムダな作業を削減しコストカットできる
ひとつずつ見ていきましょう。
1.専門的なノウハウを入れることができる
例えばネット広告に出稿する場合、ターゲットのキーワード選定や広告テキストを用意し、配信後に分析し成果を向上させる運用が必須でありノウハウは欠かせません。
社内の従業員が成果を出すためには、学習の投資だけではなく経験値も必要になるため時間もかかります。運用をアウトソーシングすることで、熟練の専門家に委託できるため、即時に成果をあげることができます。
2.コア業務に集中できる
企業の限られたリソース(労力・資金)で生産性を高めるには、コア業務に集中できる環境づくりは欠かせません。
定型業務の処理に追われてしまい、成長分野に集中できない企業も多いですが、アウトソーシングすることで業務の分散が可能となります。社員は競争力を高めるためのコア業務に集中することで、「選択と集中」を達成できるようになります。
3.ムダな作業を削減しコストカットできる
アウトソーシングすることで、専門知識を学習し経験を積む時間をカットできます。もちろんアウトソーシングによって「時間」と「ノウハウ」を買うことで今以上に支出は増えるかもしれません。アウトソーシングの支出によって生産性を高められるのであれば、費用対効果はバツグンでしょう。
アウトソーシングを活用するデメリット
続いてアウトソーシングするデメリットを見ていきましょう。主に次の3つがあります。
- 社内の情報を外に出すリスクがある
- ノウハウが社内に溜まらない
- コスト削減に至らないケースもある
ひとつずつ見ていきましょう。
1.社内の情報を外に出すリスクがある
アウトソーシングする最大のリスクは、顧客情報や機密データを外部に漏れる可能性が高くなることです。ただし適切な管理・運用体制が整っていれば情報漏えいのリスクは大きく減らすことができるため、アウトソーシング自体にリスクがあるわけではありません。
アウトソーシングを委託するベンダーのセキュリティレベルの信用度に左右されますので、委託するまえに、どのような情報を、どのように扱うかをしっかり取り決めておくことが大切です。
2.ノウハウが社内に溜まらない
例えばECサイトで発送業務をアウトソーシングする場合、業務負荷を減らすことはできますが、発送業務のノウハウは社内に蓄積されません。
ギフトラッピングや包装などECならではの業務ノウハウは必要となります。また、アウトソーシングから社内に移行する際もゼロからの積み上げとなってしまうため、一度アウトソーシングをはじめると辞められないジレンマが生じる可能性もあります。
3.コスト削減に至らないケースもある
アウトソーシングすることで社内の人件費を減らすことはできますが、委託する分のコストは加算されます。また、アウトソーシングすることで外部のやり取りが増えてしまい、かえって作業が煩雑になることも。煩雑化を防ぐには、アウトソーシング前に業務プロセスを明確化して、社内と委託先の間で十分なコミュニケーションを取ることが大切です。
アウトソーシング導入前に整理すべきポイント
最後に、アウトソーシングを導入して失敗させないために、次の2つのポイントをしっかり抑えておきましょう。
現状の課題を分析・整理する
アウトソーシングを導入する前に、「なぜ導入したいのか?」「導入して何を達成したいか?」の要件定義を明確にしましょう。
「煩雑な業務を丸投げしたい・・・」というあいまいな理由で委託すると、かえって業務内でのやり取りが増えて手間がかかることもあります。
自社の課題を洗い出し「目的」と達成したい「成果」を明確にしましょう。また、アウトソーシングするということは、これまでの社内業務を手放すことになるので、不安や不信感を抱くスタッフも出やすくなります。現場スタッフはもちろん、経営陣を巻き込んでコミュニケーションをしっかりとることが大切。
アウトソーシングを導入するメリットをすり合せましょう。
アウトソーシング後の分析をしっかり行う
アウトソーシングは委託して終わりではありません。期待どおりの成果が出ているか、作業が繁雑になっていないかをしっかり分析をしっかり行うことが大切です。もし期待どおりに運用できていない場合、原因をしっかり分析することで社内のノウハウが蓄積されます。アウトソーシングの費用対効果を最大限に発揮させるために、社内スタッフと連携して改善していきましょう。
まとめ
IT系を中心に、多彩なアウトソーシングが増えていますので、大抵の業務は委託できます。有用な反面で社内に専門ノウハウが蓄積されない点は悩ましいところでもあります。ノウハウが蓄積されない分、委託後に自社に切り替えることが困難になりますので、導入の判断は入念に行いましょう。