オムニチャネルとは?市場規模やメリット〜異業種の戦略・最新事例まで解説

オムニチャネルの「オムニ」はすべてのという意味です。つまり、オムニチャネルとはオンライン・オフライン問わず、顧客との接点が統合された状態を指します。
当記事では、オムニチャネルの意味やメリット・デメリットから、実際の成功事例まで詳しく解説していきます。また、アパレル・化粧品・金融・小売業界など、各業界のリーディングカンパニーのIR資料から、オムニチャネル施策について読み解きご紹介します。
ぜひ最後までご覧ください。

オムニチャネルとは?意味について

オムニチャネルは実店舗やECサイトの顧客・商品・在庫のデータを統合させ、シームレスなユーザーエクスペリエンス(UX)を提供し、販売の機会を逃さないためのマーケティング戦略です。

オムニチャネルをアルファベットで書くと、Omni channelとなります。Omniとは英語で「すべての」という意味。channelは水路や経路という意味で、この場合、企業と顧客の接点というイメージです。企業が顧客に対してもつすべての接点を連携させるため、このような呼び方をします。

経済産業省が発表している『平成28年度 我が国におけるデータ駆動型社会に係る基盤整備(電子商取引に関する市場調査)』レポートでは、近年の市場トレンドとしてオムニチャネルを以下のように紹介しています。

「オムニチャネルのポイントは、消費者による商品の気付、興味関心、検索(内容や特徴の理解、比較検討)、購買、受取といった一連の購買プロセスが、消費者にとって快適かつ合理的であるよう、消費者視点で各チャネルがシームレスに構成される点にある。
小売事業者の事業態様は、GMS(General Merchandise Store)、百貨店、コンビニエンスストア、SPA(製造小売業)、家電量販店など、製造小売業と多様であるが、特定の業種に偏ることなくオムニチャネル戦略は展開されている。」

オムニチャネルの施策内容は企業によりさまざま。店舗とオンラインどちらの買い物でも使える公式アプリをリリースする、スマホの位置情報サービスを利用して近隣店舗の情報をプッシュ通知で配信するなど幅広く含まれます。

ネット販売するだけがオムニチャネルではない

オムニチャネルというと、なんとなく実店舗のみを運営していた企業がECサイトを立ち上げてインターネット販売に乗り出すようなイメージをもつ方もいるかもしれません。ですが、単にネット通販をはじめて販売窓口を増やすだけでは、オムニチャネル化とはいえません。
そもそもオムニチャネルの“チャネル”として数えられるものには実店舗とECサイトのほかに、顧客に配信するメールマガジンやテレアポ、Twitter・InstagramといったSNSなども含まれます。
これら多岐にわたる種類のチャネル、それぞれの特性を活かして顧客の来店や購買を促進することがオムニチャネルなのです。 

オムニチャネルの市場規模

今度はオムニチャネルが現在どれほどの市場規模であるかを見ていきましょう。 

こちらのデータは2019年12月に発表されたもの。実店舗・ECを問わず商品やサービスを購入した消費者のうち、オンライン上の情報を元に買い物をしている人のデータです。
オンライン上の情報には、HPやECサイトのほか、店舗のブログやSNS、さらには口コミサイトや同じ一般消費者のSNS投稿の内容なども含まれています。

2019年時点でのオムニチャネル市場の規模は57.5兆円。前年比で約5.7ポイント成長しています。今後も順調に拡大していくことが見込まれており、2025年には現在の約140%に至る80.6兆円に届くと予測されていました。
2020年、新型コロナウイルスの流行は業種を横断して経済全体に大きな影響を与えましたが、そんな中、ECへの需要はかえっていっそうの高まりを見せています。
小売市場全体としては厳しい側面が目立ちますが、オンラインチャネルの活用が肝となるオムニチャネルに関していえば、今後ますます市場が大きくなるとみられます。

【最新版】EC市場規模は拡大中?成長率推移と今後の予測を徹底解説

オムニチャネルと他の言葉との違い

実店舗やECサイトなど複数のチャネルを活用したマーケティングをあらわす用語は、オムニチャネル以外にもいくつか存在します。一つひとつ言葉が似ているので、ちょっと意味を混同してしまいがち。それら用語とオムニチャネルとの違いを整理していきましょう。

マルチチャネルとの違い

マルチチャネルとは、実店舗かECサイト、どちらかのみを運営していた企業が販売チャンスを広げるため、チャネルを増やした状態のことを指します。一般的には、実店舗に加えてECサイトの運営をスタートさせるケースが多いです。
マルチチャネルの状態では、まだそれぞれのチャネルは独立した状態。実店舗は実店舗として、ECサイトはECサイトとしてそれぞれ顧客のデータや在庫をもっています。そのため、たとえばECサイトには在庫があるのに店頭で売り切れていたため来店客を逃してしまった、などの販売機会の損失という問題が生じます。

マルチチャネルについて詳しくは以下の記事で解説していますので、あわせて参考にしてみてください。

マルチチャネルとは?クロスチャネルやオムニチャネルとの違いや活用事例を解説

クロスチャネルとの違い

マルチチャネルをさらに進化させたものがクロスチャネル。マルチチャネルでは実店舗、ECサイト、外商営業など複数のチャネルが独立していますが、それらを相互に連携させた状態を指します。
クロスチャネルでは前項で述べたようなマルチチャネルであった機会損失は軽減できます。店頭とECの在庫が連携しているので、売り切れの場合は相互に案内をすればよいのです。
オムニチャネルは、このクロスチャネルの連携状態をさらに発展させたものになります。販売窓口だけでなくSNSなどのメディアの力も活用して顧客へアプローチをしている点が、クロスチャネルと比較した際のオムニチャネルの特徴です。
クロスチャネルについて詳しくは以下の記事で解説していますので、あわせて参考にしてみてください。

クロスチャネルとは?施策・戦略からオムニチャネルとの違いや分析手法まで解説

OMOとの違い

OMOはこれらのマーケティング用語の中でも比較的新しい概念です。
最大の特徴、そしてオムニチャネルとの違いは、デジタルを起点としてオンライン・オフライン問わずにマーケティング戦略を組み立て、顧客体験の向上を目的としている点。
OMOについて詳しくは以下の記事で解説していますので、あわせて参考にしてみてください。

OMOとは?最新マーケティング用語の意味から事例まで解説

O2Oとの違い

O2O(Online to Offline)とは、オンラインチャネルを利用してオフラインチャネルに集客するマーケティング手法です。たとえば、アプリで近隣店舗の情報を通知したり、メルマガにて実店舗で利用できるクーポンを配信したりするのは、O2Oの代表例です。
オムニチャネルはシームレスなユーザー体験を提供する仕組みであるため、O2Oとは目的が大きく異なります。オムニチャネルでは、チャネル間のデータ連携によってユーザー体験の改善を目指しますが、O2Oでは各チャネルを分けたうえで送客する仕組みです。

O2Oとは?今更聞けない意味や概念とマーケティングにおける施策から成功事例まで

オムニチャネルが注目される背景

近年、オムニチャネルへの注目度はとくに高まっています。チャネルの多様化、顧客体験やコミュニケーションの変化などが主な要因です。
以下では、オムニチャネルが注目される背景について解説します。

シングルチャネルからマルチ、クロスチャネルへと進化

シングルチャネルとは、顧客との接点が一つしかない状態です。従来、多くの企業が一つのチャネルに注力していました。実店舗のみ、テレビ通販のみ、ECサイトのみといったように、特定のチャネルに絞って商品やサービスを提供する形です。しかし、インターネットの普及、ECやSNSの浸透にともなって、企業と顧客の接点が多様化するようになりました。
企業と顧客が複数の接点をもっている状態は、シングルチャネルに対してマルチチャネルと呼ばれます。マルチチャネルはさまざまな形でサービスを提供できる一方、それぞれのチャネルに顧客が分かれてしまう点が問題です。
そこで登場したのがクロスチャネルです。チャネル間のデータ統合、顧客体験の統一によって、複数のチャネルを行き来して購入できる仕組みが求められるようになりました。

チャネル間で顧客データを共有しよりよい顧客体験を提供

チャネルが多様化すると、各チャネルを連携するのは難しくなります。もっともハードルが高いのは顧客データの連携です。顧客がどのチャネルを利用した場合でも、顧客の属性、購入商品、購入日時などをデータ化できる体制を整える必要があります。
顧客データの統合は必須ではありませんが、顧客体験の質を追求するうえでは注意が必要です。チャネルごとにデータの管理が分かれていると、実店舗で購入した商品をECサイトでおすすめしたり、ポイントが利用できなかったりと、顧客体験の質を下げてしまうおそれがあるでしょう。

顧客とのコミュニケーションもコールセンターから進化

オンラインチャネルの普及にともなって、顧客とのコミュニケーションにも変化が生じています。従来、企業と顧客が直接コミュニケーションをとる接点の役割は、コールセンターが担っていました。主なコミュニケーションツールは、電話やメールです。
近年では、顧客がもっと手軽にコミュニケーションをとれるよう、チャットやSNSを導入するケースが増加しています。オムニチャネルによる顧客データの連携は、チャットやSNSにおいて顧客とコミュニケーションを図るうえでも役立ちます。

オムニチャネルのメリット・デメリット

オムニチャネル化をすることで、企業はどのようなメリットを得られるのでしょうか。また同時に、どのようなデメリットを覚悟しておくべきなのでしょうか。

メリット1:顧客満足度が上がる

オムニチャネル化されたブランドでの買い物は、それまでに比べユーザビリティが高くなります。
たとえば、ECサイトで購入した商品を送料無料で実店舗で受け取れたら便利ですよね。こうしたことも、各チャネルの連携がとれているオムニチャネルでは可能なのです。
購買体験に対する満足度があがれば、顧客の企業・ブランドに対する印象は良くなり、リピーターとなってくれる可能性は高まります。顧客満足度を上げてユーザーの囲い込みをするのに、オムニチャネルは有効な施策なのです。

メリット2:より細かな顧客分析が可能

オンライン・オフライン両方で顧客の行動データを蓄積できる点もオムニチャネルの特徴でありメリットです。
オムニチャネル化を実現している店舗で、店頭の商品にQRコードをつけているケースがあります。ユーザーはスマホでスキャンをすると商品の詳細情報やレビューを確認でき、企業側はどの商品がよく読み取られているかのデータをとることができます。

そのほかにも、複数チャネルを展開することで顧客の情報を得る機会が増えるため、自社商品・サービスの購買層に対する理解を深めることが可能です。そうして集めたデータは、顧客一人ひとりへの商品のレコメンドや、購買頻度にあわせた施策や対応ができるなど、オムニチャネルのメリットといえるでしょう。

メリット3:顧客にとっての利便性が向上し機会損失が減る

オムニチャネル化は、顧客にとってサービスの利便性を格段に向上させます。買い物をする際にチャネルごとの違いを意識せず、チャネル間を横断してサービスを受けることも可能です。
また、データ連携によって在庫管理の質が向上する点もメリットです。在庫管理が適切に行われていないと、販売機会の損失につながるおそれがあります。

たとえば、ユーザーが商品に興味をもち、購入しようとした際に在庫がなかった場合、ほかの店舗へ探しに行くはずです。しかし、オムニチャネルの導入によって在庫管理を徹底しておけば、機会損失を防げるでしょう。

もしも、これからECサイトを構築してオムニチャネル戦略を実施したい場合は、ECサイト構築No.1サービスmakeshop(メイクショップ)をお試しください。標準機能に加えて各社向けのカスタマイズが可能で、オムニチャネルにも対応できます。専門アドバイザーのサポート付きで、15日間の無料体験から始められます。

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デメリット1:チャネル間の連携が必要

オムニチャネルを成功させるためには、各チャネルの連携がバランスよくとれていなくてはなりません。でなければ、同じグループ内のチャネルであるにもかかわらず対立関係に陥ってしまうおそれがあります。
よくいわれるのが、ECサイトによる実店舗のカニバリズム。カニバリズムとは、食人や共食いをあらわす言葉ですので、ちょっとぎょっとするかもしれません。

どういうことかといいますと、従来実店舗を利用していた顧客が利便性の高さからECサイトに移行する、というケースがあります。そうすると実店舗の売上が下がってしまいます。
このように新規を開拓するのではなく、ECと実店舗で成果の奪い合いが生じてしまうおそれがあるというのが、複数チャネルの展開において注意しておきたいポイント。売上チャンスの拡大もできないうえに、実店舗スタッフの士気の低下にもつながってしまいます。

ただし、直近ではこの難点を解消するため、評価のオムニチャネル化がトレンドとなりつつあります。その道を切り開いているのが、アプリケーションサービスの「スタッフスタート」。複数の大手アパレル企業がすでに導入しています。
この「スタッフスタート」では、ECサイトやSNSに投稿された販売スタッフによるコーディネートアイディアが、どれほど購買に貢献したかを評価します。とくにコロナ禍においては、休業しなくてはならない期間中でも店舗売上を確保できるシステムとして大いに歓迎されました。

スタッフスタートはこちら

デメリット2:初期コストがかかる

オムニチャネルはうまく回せば得られる利益を最大化することができます。ただし、導入には相応のコストが必要です。
まずシングルチャネル(販売窓口をひとつしかもっていない状態)の企業であれば、販売チャネルを増やすためのスタートアップ資金が必要。

複数チャネルをすでにもっていたとしても、それらを相互に連携させるためのシステム開発やデータベースの管理には人手も資金もかかります。
そのため、オムニチャネルを導入する際には、必要となる莫大な初期費用を回収できるだけの見込みが立てられる必要があるでしょう。

デメリット3:効果が出るまでに時間がかかる

オムニチャネルは即効性のある施策ではありません。顧客の満足度を向上させて、企業・ブランドに対するロイヤリティを高めることでより効果を発揮します。
そうなると、効果が出るまでオムニチャネルの高度なPDCAを回していけるだけの資金面の体力がもつかどうかがポイントになります。この観点から考えると、オムニチャネルをおすすめできるのはそれだけのリソースを用意できる規模の企業に限られてきます。

オムニチャネル戦略を成功させるポイント

オムニチャネルは、決して簡単に成功する戦略とは言えません。実現させるために踏まえておくべきポイントを5つご紹介しましょう。

ゴールの設定(ロードマップを敷く)

ビジネスにおいて何か新しい取り組みをはじめるなら、ゴールを明確に設定すべきです。
とくにオムニチャネルは、企業の特性によって有効となる施策が異なり、定義があいまいという側面があります。オムニチャネル化することで、自社が何を成し遂げたいのか。そのために、どんな施策をいつまでに実行するのかを綿密に決めましょう。

カスタマージャーニーマップ作成

顧客がどのような入り口から自社商品やサービスと出会い、初回購入を経てリピーターとして育っていってくれるのか。このように企業側が設計する顧客行動の過程をカスタマージャーニーと呼びます。
見込み顧客、初回購入顧客、優良顧客など自社との関係性の深度にあわせて顧客をステージ分けして捉えてみましょう。各ステージの顧客には、それぞれ最適なアプローチが異なります。
複数チャネルを利用して作り上げた自社の商圏に、いかに顧客を囲い込んでいくのかもオムニチャネルの目的のひとつです。

全社・全チャネルでの認識の統一

デメリットとしてECサイトによる店舗のカニバリズムについて触れましたが、オムニチャネルはひとつの部署のメリットを追求するものではありません。各チャネルで協力して全体の売上を伸ばしていくための施策ですので、スタートさせる際には全社的な取り組みが必要です。
このとき、部署やチャネルごとの認識が統一されていないと、スムーズな運用は難しくなります。あらかじめしっかりと要件を定めておきましょう。

シームレスな顧客体験が提供できる業務フロー

各チャネルの連携とあわせて、シームレスな顧客体験を提供するための業務フローを整備することも重要です。オムニチャネルにおいては、チャネル間の業務の受け渡しが発生します。たとえば、ECサイトで購入した商品の店舗受け取りはオムニチャネルの代表例ですが、業務フローが固まっていないとスムーズにサービスを提供できません。
もともと別で運用していたチャネルをシームレスに運用するには、サービスの提供側もシームレスな運用体制が必須になります。

オムニチャネル向けのスタッフ評価制度を確立

チャネルが分かれていると、各チャネルの売上はチャネル内のスタッフによって生み出されます。しかし、オムニチャネルにおいては、実店舗のスタッフがECサイトの売上をつくるケースもありえます。たとえば、実店舗に在庫がなく、ECサイトでの購入をすすめるケースです。
そのため、売上に貢献したスタッフを正当に評価する仕組みが必要になります。チャネルを横断して売上につなげた場合に、購入のきっかけとなったスタッフを的確に把握することがモチベーションにつながるでしょう。

システム統合

オムニチャネルで肝心なのが、各データの連携。それを管理する大元のシステムも、全チャネルを横断して統合されている必要があります。

PDCAサイクルを回す

オムニチャネルによって得られるメリットを最大化するためには、複数チャネルを通して得られたデータをもとにテンポよくPDCAを回していくことが求められます。でなければ、せっかく集めたデータも、コストをかけて構築したシステムも宝の持ち腐れとなってしまいます。
チャネルが複数あるということは、それだけできる対応の幅も広がるということ。SNSの投稿写真にいいねが集まった商品をセール対象とするなど、チャネルを横断した販売促進・ユーザー体験向上のための施策も打てます。
PDCAを回すことでさらに顧客への理解を深め、より適したマーケティングができるようになるのです。

オムニチャネルの成功事例

それではここからは、実際にオムニチャネル化により成功をおさめている企業の例をご紹介していきます。

セブン&アイホールディングス

セブン&アイホールディングスは2015年、「Omni7(オムニセブン)」と打ち立てオムニチャネルに参入しました。
「Omni7」自体は234億円の減損と成功とはいえませんでしたが、これを踏まえ、今度はグループ各社でのアプリリースを実施。グループ内を横断して活用できる「セブンマイルプログラム」をスタートさせ、顧客の囲い込みに貢献しています。

イオングループ

全国に店舗を展開しているイオングループですが、そのなかでも『イオン幕張新都心店』では、複数のアプリやデバイスの活用によってオムニチャネル化を成功させています。
たとえば、「イオンお買い物アプリ」の中で利用できる「撮って!インフォ」。この機能を使って食品売り場のPOPやチラシを読み取ると、そのアイテムを利用したレシピをみることができます。
そのほか、店頭で扱いのない商品をECで検索・そのまま店舗レジで支払いを可能にし、自宅まで配送するサービスなども提供しています。

良品計画

世代を問わず人気の無印良品。スマートフォンアプリの「MUJI passport」は、買い物や来店で貯められるマイレージ型のポイントプログラムが人気です。これにより来店が促進できるとともに、位置情報を利用してクーポン情報を通知するなど、さらなる購買を促す施策を打ち出しています。

ユニクロ

実店舗・ECサイト・そしてその双方を利用できるアプリでシームレスな購買体験を顧客に提供しています。ECサイトで購入した商品を実店舗で送料をかけずに受け取り可能とすることで、ユーザーにとっての利便性を高めるとともに店舗への送客も実現。ついで買いの促進などにも貢献しています。
なお、ユニクロのおこなっているオムニチャネル施策は、明快な成功事例としてよく引き合いに出されています。ユーザーがチャネルの違いを意識せず、まとめて「ユニクロ」として認識している、オムニチャネルの目指す姿を実現しているためです。

ニトリ

家具販売のニトリでは、コロナ禍のステイホームの潮流を受け、EC販売が好調です。が、以前からこの企業は実店舗とECの密な連携を成し遂げていました。それを支えているのが、公式アプリの存在。
ユーザーは、実店舗で陳列されている商品のQRを読み込み、アプリで注文して自宅へ届けてもらうことができます。また、写真検索機能が充実しており、雑誌やカタログに載っているインテリアの写真から似たアイテムを探せる機能も搭載。ユーザー満足度の向上に貢献しています。

ABCマート

アパレル品はどうしても試着が大事。中でも靴は、フィットしないものを選ぶと足が痛くなってしまうなど健康面にも影響を及ぼしかねません。 スニーカーを中心にシューズ販売をおこなっているABCマートは、試着ができる実店舗への集客に特化したオムニチャネル施策をとっています。店舗同士の在庫連携を最適化するため、あえて店舗を近い範囲内に集中して出店し、ひとつの店舗で売り切れていてもほかの店舗がカバーできる仕組みを作っています。

東急百貨店

東急電鉄グループのデパート、東急百貨店もオムニチャネル施策の一環としてアプリをリリースしています。このアプリではフロアマップを確認できる店舗の大きなデパートならではの機能に加え、そのままアプリ上で商品が買える、クーポンを得るなどといったサービスを受けられるようです。
また、FacebookやTwitterとも連携されており、SNS経由でのクーポン配布もおこなっています。

オリックス・バファローズ

今や球団もオムニチャネル化をする時代です。ここ数年、テレビの野球中継の視聴率が下降気味にある中、スタジアムの観客動員数を伸ばしているのがオリックス・バファローズ。
オリックス・バファローズが目指しているのが、ファンの感動体験の最大化。そのためのオムニチャネル施策として球団と球場の経営を一本化し、ファンクラブのイベントやチケットの販売などのデータを連携させ、より顧客満足度の高いサービスや施策の設計に活かしています。

TSUTAYA

TSUTAYAは、カルチュア・コンビニエンス・クラブが運営するサービスです。YouTubeやNetflixをはじめとする動画配信サービスに打撃を受けて、オムニチャネルへの取り組みに力を入れています。特徴的な施策は、Tカードをかざして雑誌を購入すると電子版が自動で追加される「AirBook」です。店頭で購入した商品も電子書籍で楽しめるようにすることで、ユーザーの利便性を向上させています。

赤ちゃん本舗

赤ちゃん本舗は、都市部を中心にベビー用品を販売する店舗です。商品の特性上、実店舗で確かめたいニーズと大型商品を配送にしたいニーズに対応するべく、店舗で購入した商品を最短翌日に自宅まで配送するサービスを提供しています。また、店舗側にとっても大型商品の在庫を店内にいくつも抱えておく必要がありません。

アダストリア

アダストリアは、GLOBAL WORKやLOWRYS FARMなどを展開するアパレル企業です。売上全体のうち、多くは実店舗とECサイトの両方を利用している顧客である点に着目して、ロイヤリティ向上を目的としたオムニチャネル施策に取り組んでいます。具体的には、モバイルアプリの開発をはじめ、店頭受け取り、試着予約などのサービスを開始しています。

ベイクルーズ

ベイクルーズは、JOURNAL STANDARDをはじめとする有名ブランドを展開するアパレル企業です。ベイクルーズが取り組む施策の特徴は、サービスや商品の均一化です。ポイントプログラムの統合にはじまり、商品価格やポイント倍率の統一、キャンペーンの共同実施などがあります。

UNITED ARROWS

UNITED ARROWSは、幅広いブランドのアパレル商品を取り扱うセレクトショップです。EC化率の高いアパレル業界の中でも、早い段階からオムニチャネルに取り組んでいます。ECサイトにおける店頭在庫の表示、ポイントやアプリの一本化をはじめ、さまざまな施策を実施しています。オムニチャネル化にあたり、アパレル関連に強い制作会社を採用している点も特徴的です。

各社のオムニチャネル戦略をIR等から読み解く

各業種でオムニチャネル戦略を進めている企業のIR情報から、その内容をご紹介していきましょう。

【アパレル】ワコールの販売戦略

まずはアパレルから、女性用下着メーカー、ワコールの事例をみていきます。

ワコールではいくつかの店舗に3Dボディスキャナー、AIによる接客システムを設置。この活用をはじめとして集めたボディデータにもとづいたオムニチャネル戦略を打ち立てています。

【化粧品】資生堂の販売戦略

化粧品業界では資生堂の取り組みが特徴的です。

資生堂は近年、対アジアの越境ECにも注力をしており、世界規模で商圏の拡大を目指しています。
そんな資生堂はこれまでオムニチャネル戦略として、美容と健康のプロによる「Beauty&Co.」や「watashi+」といったサービスを展開してきました。前者は資生堂に限らず広く美容応報を発信し、化粧品市場そのものの拡大をはかっており、後者は自社製品を全面的に打ち出しつつ、搭載しているセルフチェックプログラムを駆使しながら店舗への送客を狙っています。
これら既存のサービスも踏まえ、資生堂ではよりデジタルを活用した事業モデルへシフトしていくことを発表しています。

【金融】りそなグループの販売戦略

実は金融業界でもオムニチャネル化は進んでいるのです。りそなホールディングスを例にみてみましょう。

りそなグループがリリースしているアプリは、ユーザー視点での使いやすさを追求されている点が高い評価を受け、アプリ経由でのユーザー数が年々増加しています。
りそなグループはこのアプリと有人拠点、そしてそれらで集めたデータを管理し、マーケティングをおこなうデータサイエンス室の3点を活用したオムニチャネル戦略を設計しています。

【小売】ビックカメラの販売戦略

最後に小売業界の事例として、ビックカメラをみてみましょう。

すでに200以上の実店舗と、連結売上高1,000億円を突破したECで大きな商圏を獲得しているビックカメラ。2019年度の決算説明会では、公式アプリの刷新とともに幾つかの新しいサービス構想を発表、さらなるオムニチャネル化の促進を目指すことを述べています。

【まとめ】オムニチャネルは今後マーケティングでますます重要になる

オムニチャネルについてその概要と、最新の各社の動向事例をご紹介しました。 今はまだ大企業に限定されている向きの強いオムニチャネル戦略ですが、今後市場のトレンドとなっていくことは間違いないでしょう。商品・サービスを販売するためのマーケティングにおいて、ますますその注目度は上がっていく見通しです。

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