ECの4大ビジネスモデルと失敗しない構築方法を事例付きで紹介!

コロナ禍に多くの業界でEC参入が相次いでいます。ビジネスモデルに対応した高機能なECサイトを簡単に構築できるサービスも増えており、新規参入のハードルは低くなりました。反面、競合ライバルは増え競争は年々激しくなっています。

また、購買ユーザーの価値観も変化しており、単に商品の機能やサービスを向上するだけでは「売れない」傾向が見られるようになりました。今回はECの代表的なビジネスモデルに加えて、今後のECビジネスで成功するために欠かせないポイントを解説します。

ECにおける4つのビジネスモデル

EC業界における代表的なビジネスは、次の4つのモデルがあります。

種類意味ビジネスモデル
BtoCBusiness to Consumer企業と個人の商取引
BtoBBusiness to Business企業と企業の商取引
CtoCConsumer to Consumer個人と個人の取引
DtoCDirect-to-Consumer自社製造し個人へ直接販売

それぞれ詳しく見ていきましょう。

BtoC(企業と個人の商取引)

BtoCはECビジネスで最も売上規模が大きい市場です。楽天市場やAmazonなどのECモールが市場を牽引し、2020年度の市場規模は約19.3兆円でした。BtoCビジネスの内訳をみると、物販系が63%、サービス系が24%、デジタル系が13%です。

※経済産業省-令和2年度-電子商取引に関する市場調査
https://www.meti.go.jp/policy/it_policy/statistics/outlook/210730_new_hokokusho.pdf 

2020年度はコロナ禍の影響で物販系ビジネスが伸びた一方で、旅行などのサービス分野ビジネスが落ち込みました。今後も、まん延防止措置などの影響が続く限り、同様の傾向は見られると予想されます。

BtoB(企業と企業の商取引)

BtoBは企業間の取引であり、ニューノーマル・ウィズコロナ時代を勝ち抜くために、多くの業種でEC化が進んでいます。

※経済産業省-令和2年度-電子商取引に関する市場調査
https://www.meti.go.jp/policy/it_policy/statistics/outlook/210730_new_hokokusho.pdf 

2020年度のEC化率は、食品や科学・鉄などの製造業を中心に伸びました。ただしコロナ禍による経済活動の減速が影響して、全体でみると売上規模は低下しました。

BtoBビジネスはBtoCと比べて商習慣が異なり、顧客ごとの販売単価や決済方法、配送方法などがあります。ECビジネスにおいては、BtoBに特化したECプラットフォームを利用するのが一般的です。また、BtoBには会員制の「クローズ型」や新規顧客とも取引できる「スモールB型」があり、ビジネスモデルに応じた機能選択も可能です。

CtoC(個人と個人の取引)

CtoCは個人間の電子商取引です。EC業界におけるCtoCビジネスの歴史も長く、1999年に登場した「Yahoo!オークション」をはじめ、フリーマーケットの「メルカリ」や「ラクマ」などがCtoC市場を牽引しています。2020年度は、前年比で12.5%の成長率でした。

フリマやオークションはCtoCがメインですが、法人アカウントで出品し、個人取引する流れも増えています。このようなケースは、CtoCプラットフォームを利用した、BtoCビジネスと言えるでしょう。

DtoC(自社製造し個人へ直接販売)

DtoC(D2C)は、企業が自社商品・サービスの製造を行い、消費者へ直接販売するビジネスモデルです。企業⇒個人取引なのでBtoCと似ていますが、DtoCの場合は仲介業者を挟まずに取引する点に違いがあります。

例えばAmazonや楽天市場のBtoCプラットフォームで販売すると、出店料や販売手数料などが発生しますが、DtoCであれば中間マージンの削減ができます。また、直接販売することで、企画から顧客体験まで一貫したブランディングを行うことができます。

上記のグラフはECビジネス最先端の米国における、DtoCの売上規模と将来予想です。市場規模は伸び続けると予想され、今後も売上割合が高まると期待されています。DtoCはユーザーのデータを自社に集約し分析できる点に強みがあります。データを商品やサービス、顧客体験にフィードバックできるため、一貫したプロモーションを行えます。日本においてもDtoCは注目されており、今後も市場拡大すると見込まれます。

ビジネスモデルに応じたECプラットフォームの種類と手法

インターネット上で取引を行うには、ビジネスモデルに応じたECサイトを選ぶことが大切です。代表的なECプラットフォームと特徴を見ていきましょう。

ECショッピングモール

楽天市場やYahoo!ショッピングなどのECモールに出店するタイプです。例え認知度の無い商品やノーブランドであっても、出店することで「ECモールの集客力」の恩恵を得られます。なおAmazonでは、店舗単位で出店する形式ではなく、商品単位で出品するマーケットプレイス方式です。

いずれの場合も、販売に必要なデザインや機能のテンプレートがあらかじめ用意されており、カンタンに販売することができます。運用サポートが手厚い分、出店料や販売手数料などのコストはやや高めです。

単店舗型の自社ECサイト

単店舗型は、自社の独自ECサイトを構築するタイプです。単店舗型で構築できるECプラットフォームはさまざまあり、大きく分けると次の4タイプがあります。

  1. カートASP
  2. オープンソース
  3. ECパッケージ
  4. フルスクラッチ

例えばカートASPの場合は、構築に必要なデザインや機能、システム更新や保守などが全てパッケージングされています。予算が少なくシステム開発の知識が無くても、カートASPなら自社ECサイトをカンタンに構築できます。どのタイプで構築するかは、機能やデザインをどこまでこだわるかで異なります。もちろん、カスタマイズの量が多いほど、構築費用は膨らみます。

越境・グローバル型

国内の取引とは異なり、ターゲットの国に応じて商習慣が異なります。越境・グローバル型のECプラットフォームでは、言語や決済方法、配送方法など、ターゲットの国に対応した機能やデザインが備わっています。

越境EC購入額伸び率
日本3,416億円7.6%
米国1兆7,108億円9.9%
中国4兆2,617億円16.3%
※引用元:令和2年度 産業経済研究委託事業 (電子商取引に関する市場調査)
https://www.meti.go.jp/policy/it_policy/statistics/outlook/210730_new_hokokusho.pdf 

上記の表は、日本・米国・中国における、越境ECの2020年度市場規模と伸び率です。越境EC伸びている要因は、「自国より安く購入できる」こと。そして「自国では購入できない商品が購入できる」の2点があります。そして、経済発展にともなう中流階層人口が増加している点も貢献度が大きいです。中流階級は2015年までは約30億人でしたが、2030年までに49億人に増えると予測されています。特に、中国やインド、パキスタン、インドネシアなどのアジア太平洋地域は伸びが大きいと言われており、大きなビジネスチャンスが期待されます。

オムニチャネル型

オムニチャネルとは、リアル実店舗とバーチャルのECを融合させて、それぞれのメリットを生かし販売促進する手法です。「通勤の電車内でスマホから商品購入して、帰り道にリアル店舗で商品を受け取る」というように、ユーザーはオンライン・オフラインの垣根無くサービスを受けられます。

なお、リアル店舗とECサイトを保有し運営していても、それぞれの在庫やユーザー情報が統一されていない状態を「マルチチャンネル」と呼び、在庫やユーザー情報を共有させている状態を「クロスチャンネル」と呼びます。クロスチャネルをさらに進化させて、総合的に融合させたモデルが「オムニチャネル」です。

OMO型

OMOとは「Online Merges with Offline」の略語であり、直訳すると「オンラインとオフラインを併合する」という意味です。オムニチャネルをさらに進化させて、リアルとバーチャルを融合させたビジネスモデルがOMOです。

オムニチャネルの場合、あくまでユーザーの「購買活動」が重視されますが、OMOは購買活動に限定されません。ユーザーがサービスを認知し、購入してアフターサービスを受ける一連の「体験」を向上させることに重きを置きます。近年のECビジネスは、この「体験」が成功の鍵をにぎると言われています。

LTVの向上を念頭にECビジネスモデルを考える

LTVはLife time Value(ライフタイムバリュー)の略語であり、顧客生涯価値と直訳されます。LTVは1人(1社)と取引開始から終わりまでの間に、どれだけの利益をもたらしたかを表す指標です。LTVを高めるには、自社ブランドや商品・サービスに対する「信頼」や「愛着」を高めること。すなわち“顧客ロイヤリティ”の向上にあります。先述のOMOが注目されているのは、まさにLTVを高められるビジネスモデルだからです。

ユーザーにとって、ノーブランドの商品を購入するのは非常に不安を感じ「失敗するのでは…」とためらいます。非対面のECビジネスにおいて、顧客ロイヤリティを高めるのは容易ではありませんが、最適な方法としてナーチャリング(育成)が広く知られています。

※画像引用:リードナーチャリング | ウェブ解析士用語集
https://web.icloud.co.jp/glossary/リードナーチャリング.html 

これから予想される未来のECビジネスモデル

ECビジネスはトレンドの変化が激しく未来予測は困難ですが、次の2点に着目しお話したいとおもいます。

  • 新規参入の事業者が増えすぎて競争が激化
  • 機能性やサービス面において物理的なユーザー満足度が低下している

リアル店舗の撤退が増える中、今後もECビジネスの新規参入は増えます。差別化が難しい商材であれば価格競争は避けられず、「売れても儲からない」事業者がますます増えると予測できます。

そして商材の差別化において注目すべき点は、EC先進国である米国の動向です。米国のeコマースの伸び率は、2020年度は31.8%でしたが、2021年度は16.2%と大きく落ち込みました。(『Digital Commerce 360』発行の「2021 eコマース Market Report」の初期予測)これは強気な予想が続いたECビジネスが転換期を迎えている兆候と考えられています。

一方で先述のOMOを例にあげると、顧客のロイヤリティーを高める手法として注目され、売上規模が拡大しつつあります。例えばオートキャンプブームの立役者であり、時価総額1,000億円を越えた「スノーピーク」もOMOの成功事例です。同社はアウトドア用品を自社製造・販売するだけにとどまらず、同社の社員とユーザーがキャンプで交流するイベントを積極的に行っています。イベントは営業目的ではなく、 同社が提唱する「アウトドアを通じたライフスタイル」の体験を広めることでファンを育てています。また、DtoCでユーザーの声を商品開発に反映し、販売する商品は全て永久保証するなどのサービスで顧客ロイヤリティの向上に成功しています。

OMOは目新しい手法ではなく、例えばバイクメーカーのハーレーダビッドソンは1900年初期に創業した老舗ですが、「モノを売らずにコトを売る」ことに徹しています。結果、顧客ロイヤリティを高めることに成功し、顧客とともにブランドを育てあげています。

そしてこれからの未来における大きなテーマは「サステイナブル」です。SDGsで提唱される環境や社会に配慮したコト、モノ、体験の形をつくることで顧客ロイヤリティが高まると予想されます。

ECビジネスを成功に導く立ち上げ5ステップ

最後に、これからECビジネスの立ち上げを考えている方へ、企画から構築までの5つのステップを紹介します。

1. ECビジネスのコンセプトを定義する

まずはECビジネスの根幹となる「コンセプト」をしっかり固めましょう。

  • 何を達成するためにECビジネスを行うのか?
  • だれに、どんな価値を提供するのか?

「段取り8分、仕事2分」という言葉がありますが、コンセプトの定義はまさに「段取り」の工程です。例えば越境ビジネスをはじめるなら、ターゲットとなる国で、自社が提供する商品やサービスが受け入れられるかを調査し分析します。また競合分析を行い、自社の勝算を冷静に評価します。コンセプトが曖昧なまま見切り発車すると、後々の施策で方針がぶれてしまいます。ゴールから逆算し事業計画を立てましょう。

2. ECサイトの要件定義を行う

ECビジネスのコンセプトが確定したら、次にそれらを実現するために必要な機能やシステムの要件を選定します。越境ビジネスであれば、ターゲット国の言語や商習慣、好まれる決済方法や配送方法など。イメージがつきづらい時は、ライバルサイトを参考にするのも良いでしょう。ECサイトのプラットフォームは、構築した後の乗り換えが容易ではありません。オープンしてから「こんな機能が欲しかったけど追加ができない」という事態を避けるためにも、中長期的な視点で必要な要件を考えましょう。

3. ECプラットフォーム選定

要件定義が決まったら、それを実現できるECプラットフォームを選びます。自社サイトを構築する場合は、低コストのカートASPから、機能やデザインの拡張性が高いECパッケージやオープンソースなどがあります。独自カスタマイズが必要であるほどシステム開発のコストは高くなります。ECプラットフォームはコストが安ければ良いのではなく、目標達成をするための要件が満たせているかが大切。また、サーバーの保守管理やセキュリティ管理など、毎月かかるランニングコストもしっかり見積もっておきましょう。

4. サイトデザイン制作・テスト

ECプラットフォームが決まれば、いよいよサイトデザインに入ります。ECサイトは単にオシャレで格好いいデザインであれば売れるわけではありません。例えばBtoBかBtoCかによって求められるデザインやコンテンツは異なりますし、利用するデバイスがパソコンかスマホか異なります。ユーザーにとって利便性が高いサイトを「ユーザビリティが高いサイト」と呼びますが、ユーザビリティを追求することで離脱率を防ぎ目標到達へとつながります。

5.オープンと検証

ECサイトは構築しオープンして完了ではありません。特に初期の段階は集客に力を入れないと訪問数は増えません。訪問数が伸びた後は、目標達成率の進捗度を日々確認します。進捗度が低ければ、課題を分析し改善施策を図ります。目標達成させるためには、課題改善のPDCAを早く回転させることが大切です。

まとめ

今回はECのビジネスモデルについて紹介しました。EC市場は拡大を続けていますが、従来のビジネスモデルにおいては競争の激しさを増すと予想されます。特に小・中規模の事業者の方にとっては、資本力がモノを言う価格競争で勝負するのは得策ではありません。顧客が求める商品・サービスを提供すること。そして顧客ロイヤリティを向上させ、他社の追従を許さない強力な差別化を図りましょう。

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