越境ECとは?越境ECのメリット・デメリット、立ち上げに必要な準備から注意点も解説

越境EC・海外販売のメリットとデメリットをはじめ、立ち上げ方法や注意点についてご紹介します。越境ECで海外へ販路を拡大し、さらなる売上向上を目指しましょう。

越境ECとは?

越境ECとは、海外へ通信販売をおこなうECサイトのことです。ターゲットを海外に広げることで、新規顧客の開拓、売上増加を期待できます。

海外に商品を販売する際、主に以下の3つのタイプに分かれます。

1.自社運営の越境ECサイト

越境ECを展開する際、自社でECサイトを構築し運営するという方法があります。その際、ターゲットとする国を選定し、その国の言語や決済方法など、ターゲットのニーズに沿ったECサイトにカスタマイズする必要があります。

自社で越境ECサイトを構築するには時間もコストもかかりますが、デザインなどの自由度が高いため、ブランディングの観点で大きなメリットです。

越境ECに特化した「ECサイト構築システム」もあるので、自社運営の越境ECを検討するのもよいでしょう。

2.海外のECモール型

現地のECモールに出店して、自社の商品を販売する手法もあります。たとえばアメリカではAmazonやeBayという大手ECモールで、日本から商品を出品できます。

現地ECモール型の越境ECでは、自社でECサイトを構築する必要がなく、コストを抑えて越境ECに取り組めます。また、ECモールが集客をしてくれるのも大きなメリットです。

できるだけコストを抑えて越境ECに取り組みたい場合はおすすめの手法になります。

3.中国向け越境EC

世界で2番目に人口が多い中国では、越境EC市場が急速に拡大しています。中国向けの越境ECを実施する場合、下記2つのタイプを理解しておきましょう。

  • 保税区モデル
  • 直送モデル

詳しく解説します。

保税区モデル

保税区とは中国国内にある、海外から輸入した荷物を”課税されない状態”で一時的に保管できる区域のことです。かんたんに説明すると、輸入前の状態で自社商品を中国国内に保管できるということです。

中国保税区内の倉庫などで自社商品を保管していると、保管料などのコストはかかるものの、注文から商品到着までのリードタイムを大幅に短縮できます。

また、商品を一括で中国に配送できるため、輸送コストの削減も大きなメリットです。

直送モデル

直送モデルはその名のとおり、日本から消費者に直接商品を送付するモデルです。

保税区モデルのように物流面でのメリットは期待できないものの、保管料などを払う必要がないため、小規模な事業者に向いています。

越境ECの市場規模

越境ECは年々流通量が増加しており、特に米国と中国からの購入額が大きいです。

経済産業省のウェブサイトによると、2022年における中国の消費者と米国の消費者の購入額は下記の表のとおりです。

日本事業者からの越境EC購入額前年比伸び率
中国2兆2,569億円5.6%増
米国2兆7,499億円6.7%増
出典:https://www.meti.go.jp/press/2023/08/20230831002/20230831002.html

中国や米国をはじめ、海外からの購入額は年々増加しており、越境ECをおこなうことで売上増加を期待できます。

越境ECのメリット

越境ECにはメリットやデメリットがあります。

メリットは主に以下の3つです。

  1. 新たな販路で顧客を獲得できる
  2. 実店舗をもつリスク無しで出店・店舗運営ができる
  3. 日本製品は海外で好まれやすい

以下、詳しく解説します。

メリット1.新たな販路で顧客を獲得できる

海外の顧客を獲得できるという点は、越境ECでの最大のメリットといえます。日本の人口は2021年時点で約1億2千万人ですが、世界人口は2021年時点で約78億9千万人。

越境ECの販売先として人気のある中国だけでも、日本の10倍以上の人口がおり、越境ECで販路を拡大すると膨大な数の新規顧客を獲得できる可能性があります。

メリット2.実店舗をもつリスク無しで出店・店舗運営ができる

インターネットを活用する越境ECでは、海外に実店舗を持つよりもはるかに低コストで運営できます。もしも実店舗を海外に出店する場合、現地での物件探しをはじめ、人件費や現地の文化に合わせた運営など非常に大変です。

インターネットを活用して海外の顧客に商品を販売できるということは、越境ECの大きなメリットといえるでしょう。

メリット3.日本製品は海外で好まれやすい

日本製品は海外から高品質というイメージがあり、日本に旅行に来た外国人が”爆買い”していく様子は、ニュースでもよく見かけます。

当然日本に来られない外国人もいますので、越境ECを利用して日本製品を購入したいと考える外国人は多いです。

越境ECのデメリット

越境ECにはメリットだけでなく下記のようなデメリットも存在します。

  1. 国や地域に合わせた対応が必要
  2. 輸送コストが高額になる
  3. 代金回収時のリスクがある

以下、詳しく解説します。

デメリット1.国や地域に合わせた対応が必要

越境ECで海外に商品を販売する場合、販売する国の法律や規制、文化に沿った対応が必要です。販売先の言語への翻訳や、法律などを学ぶ必要があるため一定のコストがかかります。

また、国によって宗教や文化などが違うため、販売国ごとにマーケティング施策も考える必要があります。

デメリット2.輸送コストが高額になる

越境ECでは日本から海外に商品を発送する必要があるため、輸送コストが高額になるというデメリットがあります。また、輸送コストが上乗せされた商品は、現地類似商品の相場よりも高額になりやすく、差別化が必要です。

そのほかにも、輸送に時間がかかるため、国内配送よりも紛失リスクが上がるというデメリットもあります。

デメリット3.代金回収時のリスクがある

越境ECで商品を販売した場合、商品を受け取った購入者は自国に関税を支払う必要があります。ただ、関税をあまり理解していない購入者の中には、関税の支払いを拒否する人もいるため、トラブルにつながることがあります。

また、偽造や盗難のクレジットカードを使われ、取引を否認される場合もあり、国内での販売よりも代金回収時のリスクがあることを理解しましょう。

越境ECを始める際の注意点

自社の売上をアップさせるために越境ECは魅力的ですが、しっかりとした準備が必要です。

越境ECをはじめる前にチェックする注意点を解説します。

注意点1.自社の商品やサービスは越境ECに向いているか

日本で取り扱っているほとんどの商品を越境ECで販売することができますが、売れるかどうかは別問題です。商品によっては配送に時間がかかったり、配送中に破損しやすかったり、越境ECに適していない場合があります。

海外への配送なども視野に入れて、自社の商品が越境ECで販売できるか検討しましょう。

越境ECにおすすめなのがデジタル商品です。デジタル商品とは、物理的なモノではなく「オンラインゲーム」や「電子書籍」などの無形商品のことで、配送にコストがかからないため、越境ECのデメリットである輸送コストを大幅に削減できます。

注意点2.自社の商品やサービスは海外にニーズがあるか

自社の商品が販売先の国で需要があるのかどうかも重要です。日本で需要があっても、文化の違いから海外では全く需要がないこともあります。

越境ECを実施する前に、販売先の国の文化やライフスタイルを調べておきましょう。

注意点3.出店後の販売計画はきちんと立てられているか

越境ECでは出店後の販売計画もしっかりと立てる必要があります。事前に販売計画を立てておくことで、あらゆる問題に直面したときに対処しやすくなるからです。

海外で商品を販売するとなると、必ず予測していないトラブルが発生します。輸送中の事故や為替変動リスクなどはもちろん、売り続けるためのマーケティング施策なども事前に考えましょう。

越境ECの立ち上げに必要な準備

越境ECをはじめる際の注意点を確認できたら、越境ECの立ち上げに必要な準備をします。

主に以下の4項目が事前準備になります。

  • 販売商品の準備
  • 販売するターゲットを絞る
  • 出店を検討している国の法律や規制の確認
  • 出店方法を決定する

以下、詳しく解説していきます。

販売商品の準備

最初に準備するのは販売する商品ですが、在庫を確保する前に現地の法律をしっかりと確認しましょう。商品によっては輸出入の規制対象になっている場合もありますし、現地の法律によってはパッケージに記載する内容が変わってきます。

しっかりと現地の法律を確認して、商品を準備しましょう。

販売するターゲットを絞る

越境ECで効率よく商品を販売するには、ターゲットを絞ることが重要です。海外では多様な人種や文化、地域性などがあり、ターゲットを明確に絞っていないと、越境ECで売上を上げることは難しいです。

自社の商品に応じて現地を調査し、どのようなターゲットに販売するのかを決めておきましょう。

出店を検討している国の法律や規制の確認

商品を準備する際にも法律や規制の確認は必要でしたが、商品が出来上がったあとも最終確認をする必要があります。パッケージの再確認や、成分の再確認、対象地域の法律に詳しい専門家などに話を聞きましょう。

意外と落とし穴ですが、対象地域の法律だけでなく日本の輸出に関する法律も調べておく必要があります。輸出規制品目などであれば、許可が必要な場合もあるからです。

万が一法律を犯してしまったら、大問題に発展してしまうので注意しましょう。

出店方法を決定する

越境ECを実施する際は出店方法を決めましょう。

出店方法は主に下記の3つです。

  • 現地法人を設立
  • 自社ECサイトで対応
  • 現地のモールに出店

以下、詳しく解説していきます。

現地法人を設立

越境ECの出店方法として、現地法人を設立後にECサイトを構築する方法があります。準備に時間がかかりますが、対象国で本格的なビジネス展開を考えている場合は有効です。

税制面や賃金面など、メリットが多い場合には検討するとよいでしょう。

自社ECサイトで対応

自社のECサイトで越境ECを実施することもできます。自社ECサイトの場合だと、現地の言語に翻訳をしたり、決済方法を整えたりする必要がありますが、現地法人を設立するよりもはるかに低コストです。

また、デザインなどを自由にカスタマイズできるため、ブランディングの面でもメリットがあります。

越境ECに対応しているカートASPは、ShopifyやBASE、makeshopなどがあげられます。特にmakeshopは、海外販売でハードルとなる「言語」「決済」「物流」などへの準備が必要なく、追加料金なしで海外への販売を開始できます。

詳しく知りたい方は下記ページをご覧ください。

https://www.makeshop.jp/main/function/ekkyoec

現地のモールに出店

越境ECを実施する上で現地のECモールに出店するという方法があります。アメリカだとAmazonやeBayなどがありますが、現地のECモールでアカウントを作り、日本から出品するだけなのでほとんどコストはかかりません。

小規模事業者におすすめの出店方法です。

越境ECの成功事例6選

越境ECをはじめる際には成功事例を参考にするのもおすすめです。越境ECで成功しているブランドやショップなどを6つ紹介します。

【アパレル】ユニクロ

ユニクロはヨーロッパ圏をはじめ、アメリカや中国など、越境ECと実店舗で世界に事業展開しています。

越境ECサイトだけでなく、現地に実店舗も出店しているため、輸送コストの削減にも成功しており、実店舗とECをかけ合わせたマーケティング戦略で、効率的に売上を上げている企業です。

【インテリア】SAMURAI STORE

SAMURAI STOREは日本ならではの商品である甲冑や刀剣類などを販売しています。通信販売の黎明期ともいえる2002年から越境ECをスタートしており、世界中のマニアから人気があります。

日本国内であまり需要のないものでも、販路を拡大すれば売上増加を見込めるという成功事例です。

【フード】北海道お土産探検隊

「北海道お土産探検隊」は北海道の名産品を越境ECで販売するショップです。北海道は海外からの観光客も多く、人気のお土産を大量に購入することができる通信販売は人気を博しています。

食品の輸送は各国での規制や配送の手間などがかかりますが、外国語に精通したスタッフの導入や、中国大手ECサイト天猫(Tmall)との連携などで、越境ECを成功させています。

現地ECモールとの連携で越境ECに成功した事例です。

【雑貨】多慶屋

多慶屋(たけや)は年間約43万人もの観光客が来店する東京のディスカウントショップです。

1度来店した観光客にQRコードやECサイトのURLが記載されたチラシを配布して、帰国後もオンラインで気軽に商品を購入できる導線を組んでいます。

中国でよく使われている決済システム「アリペイ」を日本でいち早く導入し、中国人観光客に購入してもらえるような施策を実施しています。

日本の実店舗と越境ECをうまくかけ合わせた成功事例といえるでしょう。

【ホビー】Fake Food Japan

Fake Food Japan(フェイク・フード・ジャパン)は日本ではおなじみの食品サンプルを越境ECで販売しています。海外では日本食がとても人気で、本物そっくりの食品サンプルはとてもユニークでファンが多いです。

また、Fake Food Japanはサイトからオーダーメイドが可能です。オンラインで気軽にオリジナルの食品サンプルを購入できるため、アメリカやドイツをはじめ、世界中から注目を集めています。

【ホビー】Tokyo Otaku Mode

Tokyo Otaku Mode(トーキョー・オタク・モード)は、日本のアニメやゲーム関連のグッズを越境ECで販売しています。

日本の文化であるアニメやゲーム関連グッズをSNSで精力的に発信し、徐々に人気を獲得。海外メディアで商品が特集されて一気に知名度を上げました。

日本のアニメやゲームファンが多い国に絞った発信など、売上向上のためのマーケティング施策も参考になります。

まとめ

コロナ禍やインターネットの発達でECサイトは増加傾向にあるにもかかわらず、日本は11年連続で人口が減少しています。これからも人口減少が進んでいくとされるなかで、国内でのEC事業は厳しくなる一方です。

ただ、日本とは対称的に世界人口はこれからもどんどん増え続けることが予測されています。自社の売上を向上させるために、国内だけの販売ではなく越境ECは有効な手段です。

越境EC市場はどんどん多様化しており、新たな越境EC向けサービスなどもどんどんリリースされています。越境ECを実践して海外に自社商品を販売し、新たなビジネスチャンスを広げてみてください。

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