【ネットショップ】領収書の発行はクレジットカードなど決済によって異なる
ネットショップが発行する領収書について、要点をまとめると次の4つです。
1.お客様から代金を受領した時は領収書の発行義務がある。
2.決済会社(クレジットカード会社など)が領収書を原則発行する。
3.ネットショップは「サービス」で領収書を発行する。
4.領収書の二重発行に気をつける。
領収書の知識がなくて対応すると、有印私文書偽造罪などの罪に問われる可能性もあるので気をつけたいところです。
詳しく見ていきましょう。
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1.お客様から代金を受領した時は領収書の発行義務がある
領収書はお客様が商品やサービスを購入した際に、代金の支払いを証明するための書類です。
領収書の発行義務については、民法486条で次のように定められています。
「弁済をする者は、弁済と引換えに、弁済を受領する者に対して受取証書の交付を請求することができる」
「弁済」とは代金のことであり、「受取証書」とは領収書のことです。
つまり、お客様から代金を受領し、領収書を請求があった際は発行する義務があります。
2.領収書は決済会社(クレジットカード会社など)が原則発行する
ネットショップの場合は、お客様から直接代金を受領する決算手段は限定的であり、決済会社が取引を代行しています。
つまり、法的に領収書の発行義務があるのは、お客様から直接代金を受領している決済会社にあります。
決済方法 | 領収書の発行義務のある事業者 | 説明 |
---|---|---|
クレジットカード | カード会社(JCB、VISAなど) | 利用明細書(客控え)が領収書の代わりになる |
代金引換 | 運送会社(ヤマト運輸、佐川急便など) | 配送業者が発行する代引金額領収書が正式な領収書になる |
コンビニ決済 | 代金を受領したコンビニ | コンビニで発行された領収書(レシート)が正式な領収書になる |
後払い決済 | 後払い事業者 | 払込取扱票の「払込受領書」が正式な領収書になる(銀行の場合は「振込票」が領収書) |
銀行振込 | ネットショップ運営者 | 原則的にネットショップ運営者が領収書を発行する |
「銀行振込」はネットショップの運営者に領収書の発行義務がありますが、振込明細書を領収書の代用にすることも可能です。
ただし、振込明細書と領収書は同一ではないので、お客様から請求があれば発行したほうが良いです。
3.ネットショップは「サービス」で領収書を発行する
上述のとおり、法的にはネットショップの運営者に領収書の発行義務がない決済であっても、「領収書はネットショップから発行してもらえる」と誤認されているお客様は多くいらっしゃいます。
また、サラリーマンの方は、社内規定でネットショップが発行した領収書でないと処理できないケースもあります。そのため法的には発行義務がない場合でも、サービスとして領収書を発行するのが一般的な慣例です。
ただし、決済会社とは別にネットショップ側が領収書を発行すると、「二重発行」になるため注意が必要です。
4.ネットショップは領収書の二重発行に気をつける
領収書の二重発行は、経費の水増しなどの不正行為を疑われる可能性があります。
また、状況次第では有印私文書偽造罪などの罪に問われる可能性があるので気をつけましょう。
ネットショップ運営者が領収書を発行する場合は、お客様が「決済会社」と「ネットショップ」の2ヶ所から領収書を受領したと誤認されないよう注意が必要です。
一般的な対策として、例えばクレジットカード決済の場合、領収書に「クレジットカード払い」と明記することで誤認を避けることができます。
なお、クレジットカードの場合は、信用取引によって代金を支払うため、金銭取引は無いと解釈されます。
そのため、ネットショップから発行する領収書は、例え書面に「領収書」の記載があったとしても法的には正式な書類とはなりません。
※参考:クレジット販売の場合の領収書|国税庁
https://www.nta.go.jp/law/shitsugi/inshi/19/37.htm
お客様から領収書の再発行を依頼された場合の対処法
紛失などの理由で、お客様から領収書の再発行を求められるケースがあります。
お客様が本当に紛失したのか、あるいは経費の水増し目的なのかは判断できません。
万が一のことを考えると再発行には応じないほうが良いです。
ただし、お客様は領収書について法的な知識が少ない方がほとんどです。
法的にも再発行の義務はありませんが、だからといってやみくもに拒否すると「サービスが悪い」とクレームになることもあります。
トラブルを避けるために、次の対処法を検討しましょう。
- 前もって領収書の再発行をお断りしてトラブルを避ける
- 領収書の代用ができる書類を紹介する
- 支払証明書を発行する
ひとつずつ見いきましょう。
前もって領収書の再発行をお断りしてトラブルを避ける
再発行をお断りする旨をWebサイトの利用規約やFAQなどに明記しておきましょう。
ネットショップの方針を事前に周知することで、トラブルを避けることができます。
また、領収書に「再発行できませんので、大切に保管してください」と明記するとさらに良いでしょう。
領収書の代用ができる書類を紹介する
領収書でなくても「支払先」、「日付」、「支払金額」、「支払内容」の記載があれば代用が可能です。
これらの情報が記載されている書類は主に次の3つです。
- 注文確認メール
- クレジットカードの利用明細
- 銀行の振込明細書
上記の明細書をお客様自身でプリントや画面チャプチャーして保管しておけば領収書の代わりになります。
なお、「2」と「3」は支払内容が明記されていませんので、「1」の注文確認メールをあわせて保管しおておくと良いでしょう。
なお、「納品書」や「請求書」は代金を支払った証明にならないため、領収書の代わりにはなりません。
支払証明書を発行する
支払証明書は領収書と比べて証拠価値は下がりますが、お金を受領したことを証明できます。
支払証明書には「作成者」、「発行日」、「支払内容」、「金額」、「支払先」の5項目を記載し発行します。
なお、支払証明書のみでは効力は弱いので、注文明細メールなどあわせてお客様に保管を依頼しておくことをオススメします。
ネットショップ運営者が領収書を発行するポイント
最後にネットショップの運営でよくある領収書の質問についてお答えします。
領収書に印鑑は必要?
結論から言えば、法的には領収書に印鑑は必要ありません。ただし、日本では偽造防止のために印鑑を押す商習慣があります。
また、サラリーマンの方の場合、会社の規定で印鑑がないと認められないケースもありますので、押印したほうが良いでしょう。
ちなみに国税庁では、領収書の必須項目について次の5つを定めております。
- 領収書の作成者と会社名
- 取引年月日
- 取引内容
- 合計金額(税込)
- 領収書の宛名
※参考:国税庁
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shohi/6625.htm
領収書に収入印紙は必要?
5万円未満の取引であれば収入印紙は不要です。
5万円以上の取引から収入印紙は必要ですが、電子データ(PDFなど)で作成した領収書であれば不要です。
※参考:クレジット販売の場合の領収書|国税庁
https://www.nta.go.jp/law/shitsugi/inshi/19/37.htm
電子データの場合に収入印紙が不要になる理由は、PDFファイルやFAXによる書面は「文書を作成したこと」にならないと判断されるためです。
ただし、ネットショップ側が電子データの領収書を印刷した場合は、収入印紙が必要となります。
なお、クレジットカードの場合は、金銭のやり取りが無い信用取引になるため、正式な領収書として取り扱わられません。
そのため、5万円以上の領収書であっても収入印紙は不要です。
印紙は取り扱う商材によっては見解が異なる場合があります。詳細は会計士や税務署に確認しましょう。
領収書の発行者も7年間の保管が必要
領収書を受け取る側(お客様)は、7年間の保管期限(前々年分の所得が300万円以下の場合は5年間)が定められていますが、領収書を発行する側(ネットショップ運営者)の保管期限に規定はありません。
例えば楽天市場の保管期限は2年であり、Yahoo!ショッピングは期限がありません。
ネットショップ運営が独自に保管期限を設定できますが、お客様にわかるようWebサイトの利用規約やFAQなどに記載しておきましょう。
ポイントでの決済の領収書はどうなる?
お客様が楽天ポイントやPayPayポイントでお支払いする場合があります。
ポイント支払いの場合は、ポイント分を差し引いた金額を発行し、利用ポイントを記載します。
例えば、10,000円の買い物で2,000円ポイント支払いをした場合は、領収書の記載金額は8,000円、ポイント利用分2,000円となります。
まとめ
今回はネットショップの領収書について紹介しました。
今回の解説では国税庁や税務署の情報をもとに解説しておりますが、取り扱う商材や決済方法によっては解釈が異なる場合があります。
これからネットショップを運営する方や、新しい決済方法を追加する事業者の方は、念のために管轄の税務署や会計士に相談されることをおすすめします。
また、領収書の発行方針が決まり次第、Web上でお客様向けのご案内を載せましょう。